Evil Dolce

* AriaLien Sub BLOG *

◆Evil Dolceは樹野花葉(キノハナハ)の過去の作品を更新しているブログです。
◆不思議要素のある恋愛物語をメインに綴っています。
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緋色禁猟区

緋色禁猟区 6話



父が人間界にいてもいい条件のひとつに子ども達に関する事も含まれていた。

其れは、産まれた子どもはヴァンポーリュに帰す事。

半分人間とはいえ、気高きヴァンポーリュの血を一滴でも人間界に残す事を禁じたからだ。

だけど其れは家族がバラバラになる事を示唆していた。

当然人間である母はヴァンポーリュに行く事は出来ない。

父も母を愛しているから当然人間界に骨を埋める覚悟だった。

結果どうあってもふたりの間に産まれた兄と私だけがヴァンポーリュに連れて行かれる事は決定的だった。

だけど家族が離れ離れになるのは厭だと父が抗議したところ、私達兄妹は人間と結婚しない事、人間との間に子どもを作らない事を条件に人間界で暮らす事を認められた。



つまり人間と恋愛をしてはダメだという事だった──



小さい時は其れで家族が離れ離れにならないのならいい、と受け入れていたものだったけれど……


(私は叶先生に恋をしてしまった)



「梨香、ボケッとしてんな。前ぶつかるぞ」
「あっ」
「ったく…おんぶしてやろうか」
「! いいよ、ちゃんと歩けるから」
「なんだ、つまんねぇ」
「……」


そしてもうひとつの問題はこの兄だった。


私の兄、篠宮 隗(シノミヤ カイ)

ひとつ年上の18歳。

兄は半分とはいえ人間よりも吸血鬼としての血が濃いために父同様夜型だった。

したがって高校も夜間の学校に通っている。

吸血鬼としての血が濃いという事は、摂取する血の量も私より多かった。

母の負担を減らすために私は兄のために一週間に2~3度血を提供していた。

其れと同時に吸血鬼としての本能のひとつである近親者を求める──という性質も強く持ち合わせてしまっていた。



其れはつまり──


「送ってくれてありがとう、お兄ちゃん」
「梨香、いいかげん俺の事は名前で呼べ」
「だって…お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん」
「違う。俺は梨香の男であり、梨香は俺の女だ」
「でも私達、兄妹だし…そんな…」
「───馬鹿だなぁ、梨香は」
「えっ」

急に物陰に連れ込まれてグッとキスされた。


「んっ!」

ねっとりとした舌が口内を這い回り、私は背筋がゾクゾクした。


「はっ…はぁはぁ…」

ようやく唇を放され浅く息をしていると、口を拭いながら酷く淫靡な顔をした兄が呟いた。

「より純粋な吸血鬼を作るには近親間で交わる──これが正しい吸血鬼の姿だぞ」
「…お兄ちゃん」
「いずれ梨香に俺の子どもを産ませてやるからな」
「…っ」

恐ろしい言葉を私に投げ掛けながら兄は学校に向かって行った。



私と兄とでは考え方が違っていた。

兄は自分が吸血鬼としてハーフなのをコンプレックスに思っていた。

だからより濃い血を持つ子どもを欲しがった。

其の為に選んだ花嫁が妹である私だったのだ。


近親間の結婚はヴァンポーリュでは禁じていない。

むしろ推奨されているために、兄の考えはヴァンポーリュ側は賛成していた。



(…叶先生)

私は自分の恋心の行き場が八方塞がりな気持ちをひしひしと感じていたのだった。
 

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緋色禁猟区 7話



ある日、母がとんでもない事を云った。


「隗、梨香、明日からお父さんとお母さん旅行に行くからお留守番よろしくね♪」
「……え」
「解った。愉しんで来いよ」
「父さん達がいないからって梨香に酷い事するんじゃないぞ、隗」
「酷い事なんてしねぇよ──精々気持ちいい事、だろ?」
「もう、隗。梨香をあんまり苛めないのよ」

「……」

(ちょ、ちょっと…なんだか…私以外の家族が盛り上がっているんですけど!)

「あら梨香、大丈夫?」
「お、お母さん…なんで?なんで急にふたりで旅行行っちゃうの?!」
「あのね、趣味でやってる懸賞で温泉旅行のチケットが当たったの!しかも個室露天風呂付きのお部屋よ~」
「美紀子とふたりっきりで温泉に入れるなんて…官能的だ」
「もう、あなたったらぁ~」
「おい、張り切って3人目とか作るなよ。万が一弟なんかが産まれて梨香を寝取られるのはごめんだからな」
「やだーもぅ、隗ったら!」

「……」

(ど、どうしよう!)

私ひとりなんだかこのノリについて行けないよぉぉぉぉー!!



──実は父も母も兄が私を嫁にしたがっているという事を容認している


父は元々吸血鬼的思考の持ち主だから解るけれど、母に至っては

「隗と梨香が夫婦になったらずっと家族4人で暮らせるから寂しくないわね!」

とか云っちゃう人だから困ったものだ。

母も段々吸血鬼的思考に傾いて行っている様に感じる今日この頃。


そんな始終困惑顔をしていた私に兄がスッと近寄って来て耳元で囁いた。


「梨香、明日の夜は寝かさないからな」
「!!」


(そ、そそそそ其れってどういう事よぉぉぉぉー!!)

私は今、危険度レベルMAXで貞操の危機を感じていた。




キーンコーンカーンコーン



「…嘘…もう…放課後…?」

一日が経つのってなんて早いのだろうと今日ほど思った事はなかった。


(どうしよう…)

このまま家に帰ると兄に何をされるか解らない!


(いや…何をされるか解るといえば解るけど…)


あえて考えたくない!!


「梨香、また来週ねー」
「あっ!ののちゃん、お願いがあるの!」
「何、どうしたの急に」
「こ、今夜…ののちゃんの家、泊まらせて欲しいなぁとかって思ったりして…」
「えっ、ごめん!今夜夜行バスでお姉ちゃんとライブ会場まで行く事になってて」
「あ…そ、そうなの?」
「うん…どうしたの?何かあった?」
「あっ、ち、違うよ。ただ夜通しののちゃんとお喋りしたいなって思っただけで…」
「女子会的な事?んー魅力的なお誘いだけど其れ来週でもいい?」
「う、うん、勿論!ライブ、愉しんで来てね」
「もっちろーん!梨香にもお土産買ってくるからね!じゃあね~」
「…」

頼みの綱はブッチリ切れてしまった──


其れでも最後の最後まで何とかしようと考えながら歩いていると急に肩をガシッと掴まれた。 


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緋色禁猟区 8話



「えっ」

掴まれた肩の方を見ると其処には見知った男子が立っていた。


「篠宮さん、今日こそは返事、訊かせてもらうぞ!」
「み、三宅…くん」

そう、彼は6組の三宅くん。

以前ラブレターをもらったのだけれど、其の返事を未だにしていなかったのだ。


「あの…返事…だったよね」
「あっ!ちょ、ちょっと待って!此処じゃちょっと──こっち」
「えっ?!」

三宅くんはグイッと私の手を引っ張って何処かに向かって歩き出した。


連れて行かれたのは屋上だった。


放課後の屋上は人がいなかった。


「あの…なんで屋上に」
「だって折角の記念日は見晴らしのいいところで迎えたいじゃないか」
「記念日?」
「そう。オレ達の交際スタートの記念日!」
「へ?………交際…スタート?」
「あぁ!だって篠宮さんの返事、OKなんだろう?」
「! なっ、なんで?!」


(えぇぇーこの人、突然何を云い出すの?!)

「だってこれだけ返事を焦らすって事は、OKだけど機会を窺っているって事だろう?この間だってなんだか赤くなってソワソワしていたし…そんな状況でまさかNOじゃないよな?NOだったらこんなに返事を待たされたり、赤くなったりしない筈だから」
「……」


しまった…


そういう考え方をする人だったんだ。

今更ながら気を持たせる様な真似をした自分を殴りたくなった。

「…あの…そうじゃないの…」
「え?」
「ごめんなさい!私、三宅くんとは付き合えません。返事が遅くなったのはどうやって断わったら傷つかないかなって考えていたためで──」
「……」
「あの時赤くなったのも…其の…補習のために居残りだって云うのが恥かしくて…」
「……」
「気を持たせてしまってごめんなさい…」
「……」
「……あの…三宅くん…?」

先刻から動かなくなった三宅くんを心配する。


どうしたのかなと思い、近づこうとすると──


「……ない」
「え」

急に先刻までの和やかな雰囲気から一転した三宅くんが真剣な眼差しで私を見た。


「傷つけない断わり方なんてないよ」
「!」
「篠宮さんの其の考え方自体がオレをものすごく傷つけているよ」
「……」
「──じゃあ」

其れだけを云って三宅くんは屋上から出て行ってしまった。

「…」

私はしばらく呆然としていた。


(ひょっとして私は…とても失礼な事をしてしまったのだろうか──?)

今まで手紙を貰っても、すぐに其の場で断わるのは相手を傷つける行為だと思って考える振りをする期間を置いてから断わって来た。

今まで誰も三宅くんみたいな事を云わなかったからずっと其れでいいのだと思っていた。


其れが相手を傷つけないためになっていると…思い込んでいた。


(だけど其れは私の思い上がりだったの?)


「……ごめん…なさい…」


既に此処にはいない三宅くんに向かって私はちいさく呟いた。

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緋色禁猟区 9話



初冬の夕方はあっという間に闇夜に包まれる──

私は夕陽が落ち、星が瞬き始める空をただジッと見つめていた。


もう何時間此処にこうしているんだろう。


ただ三宅くんから云われた言葉だけが私の頭の中でグルグル回っていた。


「こらぁ、其処で何をしている!」
「…え」

不意に背後から声を掛けられやっと私は体を動かした。

急に照らされた懐中電灯の光に一瞬目を瞑ったけれど、すぐに声の主に気が付いた。


「あっ、か、叶…先生…」
「えっ、篠宮さん?君、こんな処で何やっているの」
「……」
「篠宮さん?」
「……うっ」
「えっ!な、ななな何?!」

私は思わず叶先生の胸に飛び込んでしまっていた。


「篠宮…さん?!」
「うっ…うっ…」
「……」

ただ泣きじゃくっているだけの私を問い詰める事はしないまま叶先生は優しく抱きしめてくれた。





「はい、どうぞ」
「あ…ありがとうございます」

宿直室で叶先生にお茶を淹れてもらった。

私は思う存分泣き腫らしたらとても冷静になっていて、この現状を酷く恥かしく思っていた。


「いやぁ、しかし本当ビックリしたよ。宿直の当番で見回りしていたら屋上で佇んでいる人影を発見して…お化けじゃないとは思ったけど」
「ご、ご迷惑お掛けしました!」


(そりゃ驚くよね)

暗い中、屋上でフェンス越しに外をジッと見つめている人影があったら。

自分に置き換えて考えると先生の気持ちがとてもよく解った。

「でもまぁ…君達若い子はほんの些細な事で傷つくんだねぇ」
「え…」

泣いた事情を私は先生に話した。

ジッと黙って訊いていた先生だったけれど

「いや、馬鹿にしているんじゃないよ?傷つくのは若さの特権かなと思ってさ」
「…」
「若い時に沢山傷ついた人は、其の後の人生で沢山人を思いやれると思うんだよね」
「…」
「大人になってから傷つくと修復が難しいんだよ」
「…そ、うなんですか」
「──多分ね」
「え」
「あーいやいや。つまり若い時の苦労や失敗は買ってでもしろっていうのはそういう事」
「…解った様で解らないです」
「そうだね。僕も全然解らなかった」
「…」
「でも解る様になるもんだよ。生きているうちで無駄な経験はひとつもないよ。篠宮さんの今日の経験もちゃんとこれからの人生に役に立つんだからそう落ち込まないの」
「…先生」

やっぱり【先生】っていう人はすごいなと思った。

先刻まで沈んでいた気持ちが段々浮上して来ていた。


「──さて、じゃあ家まで送っていこうかな。すっかり暗いからね」
「あっ!」
「え、何?!」
「…」


私はすっかり忘れていた。

今夜家には兄とふたりっきりなんだという事を──

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緋色禁猟区 10話



「ちょ、ちょっと!篠宮さん?!何、突然」
「お願いします!先生!!」



──何事かとお思いでしょうが、実は私、今



「なんでいきなり土下座してるのー」
「どうか一晩私を此処に置いてください!」
「何云ってるの?!」
「……家に…帰りたくないんです」
「えっと…親御さんと喧嘩でもしたの?」
「……いえ」
「じゃあどうして…家に帰りたくないなんて」
「……」


(先生の質問に即座に答えられない理由が恨めしい!)


『兄に襲われるので帰りたくないです』


なんて云ったらどんな騒ぎになるか安易に想像がついてしまう…


「理由は云えないんですけど…今夜家に帰ると私……きっと…」
「…」
「怖いんです。今日だけは…今夜だけは家に帰りたくないんです。お願いします!朝日が昇ったら帰りますから!」
「は?朝日が昇ったら帰るって…」


(しまった!おかしな云い方しちゃった)

吸血鬼としての血が濃い兄は父同様太陽には弱かった。


別に太陽に当たっても灰になったりはしないけれど、短時間で身体に相当な疲れが蓄積されるので動けなくなってしまうそうなのだ。


「お願いです…先生」
「…」

私はもうお願いするしかなかった。



ひたすら土下座を続けていると──



「──頭を上げて、篠宮さん」
「…」
「解ったから」
「え」
「…仕方がないので置いてあげる」
「! 先生っ」
「其の代わり数学の特別講座、聞いてもらうよ」
「はい!聞きます!是非聞かせてください!!」


家に帰らなくてもいいのなら大嫌いな数学の講座を聞くくらいなんでもない!


寧ろ、一晩中先生と一緒にいられるってだけで嬉しくて堪らない!


「──じゃあとりあえず…晩ご飯かな」

そう云うと先生は備え付けの小さな冷蔵庫からレトルト食品を出していた。


「篠宮さんも食べるよね。レトルトなんだけど」
「あ…はい、いただきます」


正直一日一食で充分お腹がいっぱいになる私だったけれど、先生と一緒にご飯を食べたい気持ちの方が勝って、つい無理をしてしまった。



──案の定数十分後、半分も食べられず残す羽目になる



「あれ、もう食べないの?」
「…すみません…思ったよりも食べられなくて…」
「じゃあ、僕が頂くね」
「えっ」

私が戸惑っている間に、私の食べ掛けのカレーを先生はあっという間に食べてしまった。


「…先生、食欲旺盛ですね」
「そうかな、普通じゃない?」
「…普通」

普通の人がどれだけ食べるのかがよく解らない私には気の効いた返答が出来なかった。


食事が終わると早速叶先生の特別講座が始まった。

主に今まで習って来た範囲の復習──という形だったけれど、授業よりも今の方がポンポン頭の中に入って来る気がした。

(なんでだろう…不思議だなぁ)

先生の教え方が上手いのか、其れともこの状況に私の気持ちが高揚していていつも以上に理解力がアップしているのか理由はよく解らなかったけれど。


とにかく先生とふたりきりの時間とか、兄の魔の手から逃れられた事とか、色々考えていたら私の意識は段々と薄くなっていってしまった。

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