Evil Dolce

* AriaLien Sub BLOG *

◆Evil Dolceは樹野花葉(キノハナハ)の過去の作品を更新しているブログです。
◆不思議要素のある恋愛物語をメインに綴っています。
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緋色禁猟区

緋色禁猟区 1話



世の中は目に見えている事が全てではない。

目には見えない日常というものも存在している。

知らなければ其れでいい。

関わりがなければ其れでいいのだ。


ただ


一度其の世界に掴まればきっと逃げる事は出来なくなる。


知らないうちに入り込まない様に気をつけるがいい───






「おいおい…国王が実は影武者だったってすごい騒ぎになっているぞ」
「え、本当?いつから?」
「えーっと何々…なんでも其の影武者の話だと国王は20年前から行方不明だと」
「そんなに長い期間?!誰も気がつかなかったっていうの?」
「まぁ、王様の顔なんてごく一部の王族しか解らないからじゃないか?」
「庶民には縁遠い話って事なのね」


「おはよう、お父さんお母さん」

いつもの朝の団欒に加わるためにダイニングに降りて来た。


「あら梨香、おはよう」
「おはよう梨香」

両親は話を止め、私の方に向き合った。


ふたりの間には新聞が置いてあった。

新聞は新聞でも普通の新聞じゃない。

其処には【ヴァンポーリュ新聞】と書かれている。


【ヴァンポーリュ】というのはお父さんの生まれ故郷の名前だ。


生まれ故郷というか…

生まれ世界──



「あぁ──もう随分陽が昇って来たな。私はそろそろ寝るよ」
「おやすみなさい、あなた」
「おやすみなさい、お父さん」
「美紀子、梨香、おやすみ」

父は母と私に其々チュッと頬にキスして寝室に向かって行った。


「私はそろそろ学校に行くね」
「ご飯は?」
「今日はいいや。お昼ご飯友だちと食べる約束しているから」
「そうなの、解ったわ」

私は母に見送られて学校へと向かった。




──此処までの流れでなんとなくお解かりいただけただろうか?


よく解らない、という方のために簡単に説明しよう。


私は篠宮 梨香(シノミヤ リカ)

高校2年生の17歳。

家族構成はごく普通に父母、兄がひとり。

父はコンビニの店長をしていて主に夜中勤務している。

母は専業主婦だけど時々趣味で内職をしている。

兄は──

兄はまた今度説明する事にする。


で、こんなごく普通の一般家庭の我が家が唯一普通じゃないのが、実は父が吸血鬼だって事──



「…ベタ過ぎる」


そう、私の父はヴァンポーリュという世界の吸血鬼種族だった。


よくある話だ。

世界を飛び越えフラフラと人間界に遊びに来ていた放浪吸血鬼だったお父さんは、空腹を満たすために血を吸おうと襲った人間に間違って恋をしてしまったのだ。

其れが私の母だった。

だけどヴァンポーリュという処は人間に恋する事はタブーとされていた。

其れはそうだろう。

吸血鬼から見たら人間は単なる食料なのだから。


そんな下等な人間と愛し合ってしまった父は当然罪に問われた。

裁判の末死罪という判決が下るのだが、其の父を助けたのがヴァンポーリュ国王の側近という人だった。

側近の人はある事を条件に父の命を救った。

其の条件というのは生態のよく解っていない人間について調べ、定期的に報告するという事。

食料としての人間の生態を知る事により、効率よく食料摂取を図ろうという重要なんだか重要じゃないんだかよく解らない条件だった。

だけど其の条件のお陰で制限つきながらも父は命を長らえた。

結果、父は人間の母と結婚して人間界で生活しながらヴァンポーリュとも交流をしているという唯一の吸血鬼となった。



──まぁ、とりあえずこんな感じ



実は他にも色々訳ありな事情が色々あるのだけど、其れは追々話す事とする──

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緋色禁猟区 2話



「おはよう、梨香」
「あ、おはよう、ののちゃん」

学校に着くと親友のののちゃんに声を掛けられた。

ののちゃんこと、藍沢 ののは高校に入学してから知り合った友達で、今では一番の仲良しさんだった。



「ねぇねぇ、この間もらったラブレターの返事、どうした?」
「えっ」
「なかなか評判のいい人みたいだよ?」
「なんでののちゃんが知ってるの」
「だってー親友の彼氏になる男子が変な奴だったらシャレにならないじゃない。あるツテを使って調べたよん」
「はぁ…毎回ご苦労様」
「で?で?どうするの?付き合っちゃう?」
「付き合わないよ」
「え、そうなの?んーなかなか手ごわいね、梨香は」
「…」


ヴァンポーリュという世界の吸血鬼は美形が多い。

勿論父も芸能人かモデル並…いやもしかしたら其れ以上に男前なのかもしれない。

其のせいもあって半分とはいえヴァンポーリュの血を引いている私も人間界では美形の類に入るみたいでよく男子からいい寄られていた。

ただ、私には普通に恋が出来ない理由があった──


「おーい、篠宮さーん」
「!」

遠くから聞えた声にドキッとする。

「あ、叶先生が呼んでる」
「そ、そうみたい…ちょっと行って来るね」
「じゃあ先に教室行ってるね」
「うん」

私は高鳴る胸をなるべく押さえながら叶先生の元に向かった。


1階の職員室の窓からチョイチョイと手招きされている。

「ごめんね、こんなところから呼んじゃって」
「いえ…なんですか?」
「篠宮さんって今日日直だったよね。このプリントをみんなに配ってもらえるかな」
「プリント?」
「4時限目の数学、テストするから」
「えっ、テスト?」
「そう、小テスト。で、このプリントにテスト範囲が書いてあるから今からでも足掻く様にとみんなに伝えておいて」
「抜き打ち…じゃないんですね」
「まぁ僕も鬼じゃないんでね。猶予を与えようと思って」
「はぁ…」
「じゃあね、よろしくお願いしまーす」

にこやかな笑顔を残して叶先生は窓を閉めて行ってしまった。

「…」

朝から叶先生と話せたのは嬉しかったけれど…

(テ…テストぉぉぉぉーヤダっ!)



クラス担任の叶 宗助(カノウ シュウスケ)先生。

実は叶先生は私の密かに好きな人、だ。


──でもこの恋心は決して知られてはいけないし、云ってはいけない気持ち


勿論先生だからという事もあるけれど、其れ以外でも私は【彼】以外に恋をする事を禁じられているのだった。


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緋色禁猟区 3話



4時限目の数学の小テストは散々だった。

(自慢じゃないけど数学なんて学問、全くもって関心がない!)


…ないん…だけど──


「今回の小テストで30点以下だった人は放課後補習するから居残ってねー」

「「「「えぇー!!」」」」


(嘘っ!さ、30点以下って…)

丁度30点の場合はどちらに入るのだろう、と思って叶先生の顔を見ているとバチッと視線が合ってしまった。

すると

「勿論30点だった人も居残りだよ」

「!」


(バレバレだ……)



「あらら…梨香ってば居残りなの?」
「あ…ののちゃん」

放課後、ののちゃんと一緒に出かける約束をしていたのにダメになってしまった。


「本当にごめんね…」
「いいよ、また今度一緒に行こうね」
「うん…ありがとう」
「じゃあ補習、頑張ってね」
「…はぁい」

昇降口までののちゃんを見送り、早急に教室に帰ろうと踵を返した瞬間──


「篠宮さん」
「!」

いきなり目の前に覚えのある男子が立っていた。


「あ…」

其れは数日前に私にラブレターを渡して来た人だった。


「あの…話…あるんだけど」
「あ…はい…」
「今、時間いい?」
「今はちょっと…」
「なんで?もう帰るだけでしょ」
「えっと…其の…」


なんだか【補習】という言葉が恥かしくて咄嗟に出ない。

自分でも赤くなっているのが解ってしまってついモジモジしてしまう。


どうしたものかと考えていると──


「こら、まだこんな処で油売ってんのかー」
「あっ、叶先生」

其処に運よく──かどうかよく解らない微妙なタイミングで叶先生が現れた。


「ホラ、サッサと教室に行くよ!」
「は、はい!──あの…そういう事で…すみません」

私は叶先生の後につきながら短く其の男子に断って場を離れた。



──教室までの道のり


「…はぁ」

思わずため息が出てしまった。


「先刻の6組の三宅だね」
「あ…はい」
「なんだ、君達付き合っていたの?」
「えっ?!」


(な、なん、なんでそんな誤解を!)


「ち、違います!三宅くんとはなんでもないです!先日三宅くんから手紙をもらって其の返事を催促されていただけで、決して付き合ってなどは──」
「……」
「…あ」

思わず怪しいほどに口早に捲くし立ててしまった。


「──そう、勘違い発言ごめんね」
「い、いえ…」

すまなそうにニッコリ笑われて、其れは其れでなんだかちょっとショックな気がした。


(私が好きなのは先生…なのになぁ…)


そう思うと胸の奥がキュッと痛くなった。


そして私は背の高い先生の後ろ姿を見つめながら懐かしい記憶を引き出していた。

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緋色禁猟区 4話



私が叶先生を好きになったきっかけはこの高校に入学した其の日の出来事からだった。



「う…うぅ……」

私は体育館から薄っすら聞える入学式の式典の様子を裏庭で聞いていた。

私は半分でも吸血鬼なので本当なら人間の血を吸わないと生きていけない体だった。

でも色々調べた結果、私の場合は大体一週間に一度、人間の血を少しだけ吸えば其れで充分生きていけるという事が解っていた。

だから私は毎週母から少しだけ血をもらっていた。

あとは少しの人間の食べ物と不足しがちな鉄分を補給すれば大丈夫という事だった。

しかし本当なら今朝、母から血をもらわなくてはいけなかったのを私は入学式の準備ですっかり忘れてしまっていたのだ。

普段ならなんともない体も、血が不足した飢餓状態の体では人間が多く集まる場所はキツかった。

何故なら──多分吸血鬼としての本能が勝って、見境なしに人間を襲ってしまう危険性があったからだ。

だから私はこっそり裏庭に非難してひとり時間が過ぎるのを待っていた。



(なんで…今日…よりにもよってこんな日に)

徐々に意識が薄れ掛けていく最中ふと私の視界が暗くなった。


「…?」

「──どうしたの?」

「…あ」

其処にいたのは背の高い男の人だった。

前髪が凄く長くて眼鏡を掛けていたからよく顔が見えなかったけれど、心配そうな表情をしているのだろうなと雰囲気で解った。

「君…新入生?体調、悪いの?」
「…あ…はい…ちょっと…貧血ぎ──」


ドクンッ

話の途中で私の体は酷く熱く、そして痛んだ。


「──うっ」
「えっ、大丈夫?!今保健室連れてってあげるから」
「えっ」

あっという間に私は其の人にお姫様抱っこされてしまった。


「!」


其の瞬間、見えてしまった。

抱かれている時に下から見えた其の人の表情を。



──其れはとても美しかった



(な、ななななな何、この…ありえない程の美形っ!)

顔もそうだったけれど、移動中其の人から香る匂いに私は例えようもない位に甘い気分になった。


(何…この人…すごく…いい匂い…)

胸がドキドキして堪らなかった。


こんな気持ちになったのは生まれて初めてだった──


やがて自宅に連絡して迎えに来てくれた母から血を分けて貰って其の時はなんとかなった。

だけど其れ以来私は叶先生を見ると胸が高鳴り、とてつもなく甘い気持ちになってしまうのだった。 

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緋色禁猟区 5話



「はーい、今日はこれでおしまーい」

叶先生の間延びした声で静寂だった教室内は一斉に騒がしくなった。


数学の補習者は私を含めて五人いた。


(私ひとりじゃなかったのはよかったけれど…)


生憎女子は私一人だった。

残りは男子が四人だ。

ある意味これはこれで充分恥かしい現実だった。


チラッと叶先生の方を見た。

名残惜しかったけれど教壇の前で後片付けをしている叶先生に声を掛けた。


「先生、今日はありがとうございました──さようなら」
「あぁ、暗くなって来ているから気をつけて帰ってください──寄り道しないようにね」
「はい」

いつもの様に長すぎる前髪と瓶底の様な眼鏡ではっきりと顔は見えないけれど、口元の湾曲で笑顔なんだなと解る。

私は薄暗くなっている外を廊下の窓越しに見ながら下駄箱に向かった。



「篠宮さーん!」
「え」

校門手前で複数の男子に呼び止められた。

其れは先刻一緒に補習を受けていた男子達だった。


「何?」
「送っていくよ」
「そうそう、暗くなっているから」
「篠宮さんみたいな美人がひとりで歩いていたら危ないって!」
「っていうか一緒に帰ろ?」

「…」

多分好意からの行動なんだろうけれど、ちょっとだけ下心が見え隠れするのはなんだろう。


「あの…気持ちは嬉しいけど、家、わりと近くだから大丈夫」

気を使ってなるべくやんわりと告げた───のだけれど


「近いなら尚更!」
「送らせてよー」
「もしよかったらお茶でも飲んでいかない?」
「補習仲間同士、慰労会しようぜ」

「…」


(どうしよう)

なんだかちょっとウザくなって来たなぁと思った瞬間、私の体に急に腕が巻きついて来た。

「! なっ」
「おまえら、俺の女に何してんだぁ」


「「「「!!」」」」


私の腰に手を回しこれでもかってくらいギュッと私を抱いている【彼】は低く云った。

これまた馬鹿みたいに背の高い迫力のある男前ぶりだった。

凄んだ表情と鋭く光った眼光で一瞬にして其の場の温度が下がった気がした。

勿論男子達はビックリしながら慌てて帰ってしまっていた。



残された私と【彼】



「…どうして此処にいるの?」
「迎えに来たに決まってんだろ」
「学校は?」
「梨香を家に送ってから行く」
「…」

はぁ…とため息をひとつついた。

「ほら、帰るぞ」
「…うん」

ギュッと握られた手は何処へも私を逃がさないための鎖の様に感じた。

「ちょ…痛いよ、力入れすぎだよ、お兄ちゃん」
「そんなに強く握ってねぇよ」
「…もう」


私は【彼】の───この兄のせいで普通の恋が出来ない
 
ううん、兄だけのせいじゃない。


私は【人間とは恋が出来ない】


そういう決まりだったのだ──


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