(キス、される!)

本能的にそう思った私の体は、馬鹿力よろしく高岡さんの体を強く押していた。

「っ、い、今瀬さん」
「あ、あの…わ、私…」

あまりにも突然の事にバクバクと高鳴る心臓が破裂しそうだった。

「こんな状況でズルいと思われても仕方がないと思うけれど…訊いて欲しい」
「え」
「僕は…ずっと前から今瀬さんの事が好きだった」
「?!」

(な…何…?)

「今瀬さんが入社した時からずっといいなと…多分、一目惚れだった」
「……」
「でも仕事に慣れる事に一生懸命だった君に告白なんて出来なくて…遠くから見守る事しか出来なかった」
「…」
「だけど此処数日、君が急に綺麗になった気がして僕は焦った」
「…」
「もしかして…暮永と何かあった?」
「!」

ドクンッと形容しがたい動悸がした。

(何…今、何が起こって…)

突然始まった高岡さんの告白。

切なく愁いを帯びた視線は私から逸らされる事なく、切々と其の胸の内を語っているようだ。

(嘘…嘘でしょう?!)

まさかあの高岡さんが私なんかを好きだなんて──

混乱している頭を抱えながらも高岡さんの告白は続いていた。

「暮永と飲み会の幹事になってから何となく今瀬さんの雰囲気が変わって来たなと思って…其の変化が顕著になったのがこの数日間の事だった」
「…ぁ」
「もしかして…暮永と付き合っているの?」
「!」

ズバリ云われて体が硬直した。

(私、そんなに解り易いんだろうか?!)

夜宵さんと付き合っている事を会社の人に云ってもいいのかどうか、そういった事を話していなかったなと今更気が付いた。

一応社内恋愛は禁止されていないと訊いていたけれど、私の一存で其れを認めていいのかどうかの判断がつかず、どうしたらいいのかとしどろもどろになってしまう。

「…っふ、今瀬さん、其の態度、『はい、付き合っています』って云っている様なものだよ」
「!!」

(しまったぁぁぁー私の挙動不審な態度のせいで~~!!)

あっけなくバレてしまった事に変な緊張感が走った。

「そうか…暮永と…」
「あ、あの…高岡さん」
「僕がのんびり構えていたからいけなかったんだよね」
「…え」

其れまで柔らかな表情を見せていた高岡さんの顔つきが瞬時に変わった。

「──僕、本気で君の事が好きなんだよ」
「!」

いきなりガッと手首を掴まれ、其のまま畳に押し倒されてしまった。

(なっ…!)

「僕が先に君に告白をしていたら…君は応えてくれただろうか?」
「あ、あのっ…」
「僕は暮永なんかよりもずっと君の事を愛している」
「っ!」

高岡さんの熱い吐息が私の耳と首筋にかかって妙な気持ちになる。

(や、やだぁ…なんだか体の力が…)

抵抗したい気持ちはあるのに何故か体に力が入らずいう事を利いてくれない。

「ねぇ…どうか僕と付き合って?」
「ぃ~~」
「僕はきっと君を幸せにする。身も心も…蕩かす程に愛するから」
「~~~やぁ」

甘く囁かれる甘美なひと言ひと言に体が火照り気が遠くなりそうだ。

見えない何かで体をグルグル巻きにされ、実際は触れられていないのに何故か奥深くまで冒されている様な気がしておかしくなりそうだった。

(や…やだ…やだやだやだっ)

非力な私の精一杯の抵抗は大人の男の人には敵わない。

だけど

『好きだから、俺、あんたの事、好きだから』


(…あっ)


あの日…

夜宵さんと初めて結ばれたあの夜、少しはにかみながらぶっきらぼうに私に告げた夜宵さんの言葉が色濃く脳裏に蘇った。

(夜宵さん…!)


「いやぁぁぁぁぁぁ!」


バッチィィィ──ン


「っ!」

私は痺れる体に精一杯の力をかき集め、其のまま覆い被さっている高岡さんの頬を思いっきり叩いた。

其の拍子に高岡さんは私の上から退き、畳の上にドンッと尻餅をついた。

「~~痛っ」

私に叩かれた頬を撫でながら呟く様に言葉を発している高岡さんから距離を取ろうと私は思うように動かない体を引きずる様にして出入り口まで這った。

けれど

「──意外と身持ちが固いんだね」
「!」

扉に手を掛けようとした私の手は容易く高岡さんに取られてしまっていた。

yoas150
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