「──いきなり盛ってすまない」
「…はぁ…はぁっ」

多分時間にしたら数十分程度の短い行為。

だけど其の短い時間での行為の内容はとても濃いものだった。

私は浅く息を吐きながら肩を揺らしながら呼吸していた。

(な…なんだったの…っ、今の)

訳の解らない内に始まった行為。

後ろから挿入させられあっという間に一回イカされ、そして気が付けばいつの間にか椅子に座っていた暮永さんの上に乗せられ其のまま激しく揺さぶられまたイカされてしまった。

(あ…あ、朝から…しかも会社でこんなっ…!)

少し前の私では到底考えられない数々の行為に頭が付いて行かずしばらく茫然としてしまった。

「俺が最初に朝恵に声を掛けようと思ったのに高岡がいて、しかもあんな場面見せられて」
「…」
「俺以外の男に赤くなるあんたを見ていたら説教をしてやらないと思って。でもあんたが俺にする弁解を訊いていたら言葉にするよりも先にあんたの気持ちが俺の中に流れ込んで来て」
「…え」

暮永さんが云っている事が一瞬よく解らなかった。

だけど段々其の意味が解ると一気に顔に熱が集まった。

(そ、そうか…!暮永さんって私の気持ちが読める人だった)

彼は云っていた。

気になる相手の心が解ると。

其れは敢えて読もうと思わなければ解らない事だったけれど、何故か私の心は意図しなくても自然と流れて来てしまうのだと。

「しどろもどろな言葉よりも先にあんたの俺に対する気持ちが伝わって来て、そうしたら自然とムラムラと来て」
「…」

(そんな理由で私は朝から唐突に襲われてしまったというの?!)

其れは私が抱いていた暮永さんのイメージとはズレていた。

「買い被るな」
「え」
「今あんた、俺のイメージが違うって思っただろう」
「…また読んだんですか」
「読みたくて読んだんじゃないけどな」
「…」

なんだかもうこんな事には慣れてしまいそうだった。

勝手に心を読まれてしまう。

口に出さなくても気持ちを悟られてしまう。

其れは時と場合によってはとても厄介なものだったけれど…

「俺は欲望に忠実なんだ」
「…」
「興味のない事や物に対してはとことん無感情だが一旦興味を抱いたものには感情深くなる」
「…」
「好きになった女にはとことん俺を刻み込みたい。俺のものなんだという印を常につけておきたい」
「~~~」
「そんな俺にあんたはもう囚われてしまったんだ」
「!」

不意にグイッと腕を取られ抱きしめられた。

「俺はまだあんたに俺自身の事を話していない」
「…」
「だけど俺はもうあんたの事が片時も離したくない程に好きで…愛しているんだ」
「っ!」

そっと頬に掌を当てがわれ、分厚い前髪から覗く漆黒の瞳に見つめられた。

「俺が何者でも…愛してくれるか?」
「…ぁ」
「俺のものに…なってくれるか?」
「~~~」

ただがむしゃらに体を貪り続けた昨日。

彼は私の事を好きだと云ってくれた。

彼がインキュバスという悪魔と人間とのハーフだと知っても囁かれた愛の言葉はすんなりと私の心に入って来た。

本当の彼が何者かだなんて今だってよく解らない。

だからほんの数十分前までは確かに確証が持てなかった気持ち。


だけど今は──


「朝恵?」
「…はい」
「え」
「私も…暮永さんの事が好きです」
「!」
「あなたが何者でも…私は目の前の此処にいるあなたの事が好きで…あなたのものになりたいと思っています」
「…朝恵」


もしかしたら私のこの選択は間違っているのかも知れない。

恋愛経験が皆無の私がこのたった数日間に起きた出来事を一生のものとして捉えて、これからの人生をこの目の前の人だけに捧げるだなんて無謀な事なのかも知れない。

(逃げられない)

半分悪魔である彼に嘘や誤魔化しなんて通用しないだろう。

何かのきっかけで彼との関係から逃げ出したくなっても其れはきっと叶わないのだと思う。

だからこそ彼に対して生半可な気持ちで彼の好意を受け入れてはダメなんだ。

(解っている)

私はちゃんと解った上で彼からの告白を受け入れるのだ。


「私の全てはあなたのものです。だから──」
「…」
「だからあなたの全ても私にくださいね」
「……」

そんな私の囁きに彼はちいさく「当たり前だ」と返してくれた。

今までの彼には珍しいとても柔らかな笑顔と共にそう、返してくれたのだった。

yoas150
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