Evil Dolce

* AriaLien Sub BLOG *

◆Evil Dolceは樹野花葉(キノハナハ)の過去の作品を更新しているブログです。
◆不思議要素のある恋愛物語をメインに綴っています。
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2018年01月

夜と朝のまにまに 55話



いつもより熱い朝を迎えた其の日、朝食を摂りながら夜宵さんが云った。 

「朝恵、昨日行ったエステサロンの名前、なんて云うの」
「名前?どうしてですか」
「少し調べる」
「?」

何を調べるのかと思いながらも私は夜宵さんにエステサロンの名前を告げた。

朝食を済ませると夜宵さんはPCを起ち上げ、エステサロンの名前を検索しHPを開いた。

「此処か?」
「はい、そうです」

エステサロンに行く前に見たものと同じHPが開いてあって、私も夜宵さんの隣に座って其れを観た。

「随分高級そうな処だな」
「そうでしょう?私もそう思って行くまでに凄く緊張して…で、行ったら行ったでお店の豪華な外観に益々気後れしちゃって…でもスタッフの皆さんはとても気さくで優しいいい人ばかりでした」
「へぇ…」

私の話を訊きながら夜宵さんはHPのあらゆる処をクリックして観ていた。

やがて

「──フィルターがかかっている」
「は?…フィルター?」

夜宵さんが発した言葉がよく解らなくて首を傾げた。

「このHP、普通の仕様のものじゃない。何かに対しての対策がされている」
「…其れってコンピューターウィルスとか…そういう事の対策ですか?」
「違う──もっと非科学的な事に対する事からの」
「…」

益々夜宵さんの云っている事の意味が解らない。

「つまり──このエステサロンはただのエステサロンじゃないという事」
「! …其れって」
「多分あの人の息がかかっている」
「…あの人」

其処でようやく夜宵さんの云いたかった事の意味が少しだけ解った様な気がした。

「朝恵にこの店を紹介したのは誰だ?」
「……」
「其の人の正体はなんだ?」
「……」
「──つまりは、そういう事だ」
「~~~っ」

ゾクッとした悪寒が背筋を抜けて行った。

まさかという気持ちと、得体の知れない体験をしてしまったんじゃないかという恐怖。

様々な感情から私は其の日一日、夜宵さんに慰められなければどうにかなってしまいそうだった。





「そうよ~わたしのお店よ」

「「……」」

翌日の月曜日、出勤して早々私と夜宵さんは直ぐに秘書室に駆け込んだ。

今回の件に関して深く関わっているであろう人物として導き出されたのが黒川さんだったからだ。

だから其の真意を確かめようと朝一で乗り込んだ私たちを迎えたのは、やけにあっさりと黒幕だった事を認めた黒川さんだった。

「一体どういうことですか──何故朝恵をサキュバスの巣に放り込んだ」
「あら、放り込んだなんて人聞きの悪い。わたしはただの親切心で紹介しただけよ」
「…親切心?」
「文字通り、花嫁になる彼女を今以上に綺麗にするための手助けをしたにすぎないわ」
「だけどただのエステサロンじゃなかった」
「あら、でも彼女、すっごく綺麗になったと思わない?たった一回のお試しコースだけの施術で変わるものでしょう?其の実感はじっくりと味わったはずだわ」
「…」

ほんのり頬が染まった夜宵さんに黒川さんはいつも通りの優雅な笑顔を浮かべながら応えた。


夜宵さんがHPから読み解いたあのエステサロンの正体は、実は黒川さんが経営するお店で其処で働くスタッフの全てがサキュバスという悪魔だという事だった。

夜宵さんや高岡さんの様なインキュバスとは対になる女性の淫魔。

サキュバスは睡眠中の男性と性交して、其の精液を奪うそうだ。

──つまり

私は其のサキュバスであるエステティシャンから何かの行為を施され、其の影響によっていつもより淫乱で大胆な行動を取ってしまったという事らしい。

(ある意味…記憶がなくてよかった…かも?)

どんな恥ずかしい事をしたのか覚えていないというのが少しだけマシだったかも、と思えてしまう。

「ね?親切心でしょう──わざわざわたし達が長居出来ない教会で挙式するという恩知らずな夜宵にちょっとしたご褒美をあげたのよ」
「言葉の意味と発言が矛盾している」
「してる?そうかしら──でも、ご褒美だったでしょう?」
「…」
「普段とは違った彼女の本能のままに乱れた行為に悦びを感じたんじゃない?」
「…」
「本当の事を云うと最初はね、嫌がらせのつもりだったの。清楚で純情なあなたの愛おしい彼女が、少し手を加えただけでただの雌犬の様に淫乱になってしまうという堕落振りにさぞや夜宵はがっかりするだろうなと思って」
「…」
「だって夜宵は嫌いでしょう?馬鹿みたいに盛った雌犬風情の淫乱女の事が」
「…」
「でも……違ったみたい。やっぱりあなたは彼女がどんなに醜くても愚かしくても…どんな姿を見せても愛しているのね」
「当たり前だ。朝恵は他の女たちとは違う」

(! …夜宵さん)

思わぬ処で夜宵さんの本心が知れて恥ずかしいのに嬉しいと思ってしまっている私がいた。

「インキュバスの本能として本来は好ましいと思う淫乱女は、夜宵にとっては朝恵限定なのね」
「…」
「ね?嫌がらせになっていないでしょう?ご褒美だったでしょう?」
「…物は云いようですね」

はぁと浅くため息を吐いた夜宵さんは、話はこれで終わりとばかりに私の手を引いて秘書室から出て行こうとした。

すると

「夜宵──これからもわたしを愉しませて頂戴ね」

少し低い声色の黒川さんの声が背後から響いた。

「…」

夜宵さんは其れには応えず、其のまま振り返る事無く私たちは部屋を後にしたのだった。

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夜と朝のまにまに 54話




あなたが欲しい 


心も体も


其の全てが欲しいの──





「……んん」

頭の中に響いた声が遠ざかり、漆黒の闇から徐々に薄明るくなって行く感覚がした。

「……ぁ」

重たい瞼が上がり、目に入ったのは仄かに明るい室内だった。

(……此処、は…)

「俺の家の寝室」
「!」

不意に聞こえた少し掠れた声はよく知っている声。

「意識を取り戻したか」
「えっ…や、夜宵さん?」
「そう、俺──ちゃんと解るか?」
「? ……はい」

ベッドの上で寝ている私の隣にいる夜宵さん。

其れはもう見慣れてしまった光景だったけれど…

(なんだか…変)

何処がどう──?

とまでははっきり解らなかったけれど、なんだかいつも迎える朝とは違う様な気がした。

「あぁ、確かに違うだろう」
「!」

そう云いながら上体を起こした夜宵さんの姿を見て私はギョッとした。

「な、何…なんですか…其れ」
「そんな目で見るな──全部朝恵のせいだ」
「?!」

私の目の前に晒された夜宵さんの裸体。

其処にはありとあらゆる処に薄茶色い痣が点在していた。

其の数があり得ない程多くてまるで上半身が水玉模様にでもなっているみたいだった。

「朝恵、昨日の事覚えていないのか」
「昨日…って…」
「エステが終わって俺が迎えに来た事は」
「…覚えています」
「迎えに来て車に乗って」
「…夜宵さんの…マンションに来ました」
「其れから?」
「……其れ、から……」

(……あ、あれ?其れから……どうしたんだっけ?)

今この状況を見れば多分マンションに着いてからいつもの様にえっちな事をしたのだろう、という予測が立つ。


──でも


(…嘘…き、記憶が…ないっ!)


時々夜宵さんからの求めが激し過ぎて途中で意識を飛ばしてしまう事はあった。

でもちゃんと始まりや終わり…気を失うまでの行為の記憶はあった。


其れなのに──


「……お、覚えて…いません」
「…」
「はっ!も、もしかして其のキスマーク…わた、私、が…?!」

先刻夜宵さんが呟いた『全部朝恵のせいだ』という言葉の意味が何となく繋がった。

「昨日は……朝恵が積極的だった」
「……へ?」
「部屋に着いた途端、玄関先だというのに俺を押し倒して濃厚なキス攻めを始めた」
「………」
「其れから今まで俺が頼んでも恥ずかしいからの一点張りでやってくれなかったフェラをしてくれた」
「?! なっ」

(嘘…噓噓噓……嘘っ!!)

「そして俺の上に跨った朝恵は其のまま騎乗位で激しく俺を責め続け、其の合間合間に体中をきつく吸ってこの通り、無数のキスマークをつけた」
「う…嘘…です~~」
「嘘じゃない」
「そんな…そんな恥ずかしい事の数々…私に出来っこない」
「現にこうして証拠が残っている」
「其れは……で、でも」

勿論夜宵さんが嘘を云っているとは思わない。

でも夜宵さんの云う様な恥ずかしい行為を私がしたなんて…

(信じられない!)

訳が解らなくなって私は頭を抱えた。

其れでも体のあちこちに残る倦怠感や燻った火照りが夜宵さんの言葉が真実なのだと告げている様だった。

「朝恵」
「……や、よいさん…私、本当に記憶が……」
「あぁ、解っている」
「──え」

混乱する私の体を夜宵さんは力強く抱きしめてくれた。

其の温もりが素肌を通してじわじわと心の奥深くまで浸透して徐々に落ち着きを取り戻して来た。

「何もかも解った」
「…解ったって…何が」
「其れは後で解る──ただ、これだけは云わせてくれ」
「え」

間近に迫った夜宵さんの唇が私の額に落ちる。

ちいさくチュッと音を立てて直ぐに唇は離れた。

そして耳元で囁く様に呟いた。


「恥ずかしい事をしてくれた朝恵は最高だった」
「~~~っ!」

熱っぽく囁かれた言葉に鎮まっていた鼓動がドクンと高鳴る。

濃厚な行為なんて記憶にないのに何故か体が勝手に火照って行ったのだった。

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夜と朝のまにまに 53話



車で夜宵さんのマンションまで真っ直ぐに向かった。

其の間、私の体は何故か熱を持ち疼きっ放しで、部屋に滑り込んだ途端先を行っていた夜宵さんの腕を掴み其のまま押し倒してしまった。

「なっ…!朝恵?!」

私の突然の行動に夜宵さんは驚きの表情をしていた。

私に押し倒されて、其の下でほんのり顔を赤らめている夜宵さんの顔を見た瞬間私の思考はスパークした。

「ふっ!」
「んんっ」

夜宵さんの唇に触れ、深く繋がった。

「ちょ…朝恵っ、此処、玄関──」
「はぁ…んっ」
「んっ!…ふ」

言葉を吐く夜宵さんの唇を貪る様に食む。

舌と舌が深く絡みつき、其の熱さがお互いを行き来した。

「! ~~おいっ」
「…はぁ…はぁ…」

夜宵さんの唇を存分に味わった後、私は性急に夜宵さんのベルトに手を掛けた。

「……朝恵」
「夜宵さん…夜宵さんっ」

この時の私の頭の中にあったのはただ夜宵さんの全てが欲しくて堪らないという気持ちだけだった。

其れを察したのか夜宵さんはもう私のする事に抵抗しなかった。

「──そんなに俺が欲しいのか」
「夜宵さん…夜宵さん…」
「……はぁ、もういい。好きにしろ」

そんな夜宵さんの呟きを訊きながらも私は既に大きく勃っていた夜宵さんのモノを取り出し口に含んだ。

「んっ」
「うっ…!」

浅く呻いた夜宵さんの色っぽい声に私の奥深くがジワッと潤んだ。

「んん…ん、んっ」
「はぁ…ぁ…んふぅ…」

私がモノをしゃぶる音が厭らしく静かな室内に響いた。

ジュッジュッと耳に付く度に私の中から何かが濡れ落ちている気がした。

「はぁ…と、朝恵…っ」

私がねっとりとモノを舐め上げ、口の中で其れを蹂躙する度に夜宵さんは艶っぽく喘いだ。

不覚にも其の声だけでイってしまいそうになり、思わずきつく吸い付いてしまった。


瞬間


「ぅあっ」
「!」

口の中に何かが大量に流し込まれた感覚がした。

思わず嘔吐きそうになったけれど、其のまま喉に流し込んだ。

「はぁはぁはぁ…」
「ん…んんっ」

私の口から抜けた夜宵さんのモノは硬さを保ったままヌラヌラと光り輝いていた。

私は呑み込み損ね口の端に流れた精液をベロッと舌で拭った。

「…と、朝恵」
「…」

高揚した表情の夜宵さんは私をジッと見つめていた。

そんな表情は私の中を更にジンジンと疼きさせ、もう堪らなくなった。

「…夜宵さん」

私は下着を脱ぎ、夜宵さんの上に跨り其のまま雄々しいモノ目指して腰を下ろした。

「っ!」
「あぁぁぁん」

メリメリと肉を割って奥深く刺さるモノのあり得ない程の質量にゾクゾクとしたものが背中を駆け抜けて行った。

「とも…っ、激しいっ」
「はぁ…あぁぁん…あ、あっ」

最奥をギュッギュッと擦られると何ともいえない気持ちになった。

自然と腰が動き、もっともっとと強請る様にくねくねと円を描いた。


(もっと…もっと奥深くに…)


夜宵さんの精液が欲しくて、何としてでも絞り出そうという意識が私の中を支配していた。

もっとも私の深層意識下ではそんな恥ずかしい事はしたくなくて、今積極的に夜宵さんの上で動いている事が信じられないという気持ちでいっぱいだった。

(恥ずかしい…!でも止められないっ)

矛盾したふたつの意識に絡め取られてしまって訳が解らなくなっていた私だった。


やがて

何度目か解らない絶頂を迎えて私の意識は其処でブッツリと途切れてしまった──


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夜と朝のまにまに 52話



初めてのエステが始まってどのくらいが経っただろうか── 


「今瀬様、ご婚約者様にとても愛されているようですね」
「…」
「わたし、解るんですよ。肌を触っただけでどんな食生活をされて運動をされてそして──どんな風に男性に愛されているのかという事が」
「…」
「今瀬様の肌はとても美しいです。きめ細やかで張りも弾力もありますし、そして何より色白で染みひとつありません」
「…」
「このままでも充分愛され体でいらっしゃいますが、もう少しレベルアップしてご婚約者様をあっと云わせましょう」


うんと遠くでエステティシャンの大野さんの声が響いている。

だけど私は其の問い掛けに応じる事が出来ないでいる。


(なんで…体、動かない…声も…)


先程から受けているマッサージがあり得ない程気持ちよ過ぎて、そして部屋中に香っているアロマがいい匂い過ぎて頭も体もボーッと脱力した様な感じになっている。

(凄く…気持ちいい)

エステとはこんなに気持ちのいいものなのだろうか?と考える事すら怪しくなって来た。

ただ大野さんから施される技が凄過ぎて、まるで夢の世界にいる様な心地になってしまったのだった。





「──今瀬様」
「……」
「今瀬様、終了致しましたよ」
「……はっ!」

ユサユサと揺れる優しい振動で私は我に返った。

「ふふっ、とても気持ちよさそうにしていただけて光栄です」
「あ…あの、私っ」

どうやら私は余りにも気持ちよ過ぎて寝てしまっていたようだった。

そんな私に厭な顔ひとつせずに対応してくれる大野さんに恐縮した。

「ご指定されたコースメニューの施術は全て完了しました。如何ですか、何か実感される事がございますでしょうか」
「あ…はい、なんだか体が軽いです!其れに…脚、なんだか細くなったような…」
「ほんの少しだけ浮腫みが見られましたので念入りにリンパマッサージを施しておきました」
「えっ、其れ…メニューにはなかった様な」
「サービスです。今瀬様があまりにも嬉しい反応をなさってくださったので」
「~~す、すみません~寝てしまって」
「いいえ、其れほど気持ちよかったという事ですよね?エステティシャンにとってはご褒美みたいなものです」
「…」

(大野さんって…いい人!)

見た目と同じ様に中身も美しいんだなと思ったら女性相手なのにドキドキしてしまった。


「本日はありがとうございました。当店の案内に満足されましたらまたどうぞご利用お願いいたします」

お試しコースを終わり、お店を出る際最初に受け付けてくれたスタッフさんとエステティシャンの大野さんに挨拶された。

私もふたりに挨拶をしてお店を出た。

こうして初めてのエステ体験は無事終了したのだった。


(お店の雰囲気もスタッフさんの対応もよかったなぁ)

充分な満足感を得た私は足取りが軽やかだった。

携帯を取り出し時間を確認すると16時少し前だった。

(夜宵さんに連絡しなきゃ)

私はエステが終わった事、今いる場所などを報せるメールをした。

すると直ぐに返事が来て夜宵さんが指定した迎えに来てくれる場所まで移動したのだった。





「朝恵」
「夜宵さん」

連絡してから15分程で夜宵さんが迎えに来てくれた。

以前迎えに来てくれた時同様、車でやって来た夜宵さん。

私は素早く助手席に乗り、ほぅとため息をひとつ零した。

「待たせてしまったか?」と話す夜宵さんの声をシートベルトを締めながら訊いていると少しだけ体の異変を感じた。

(…あれ?)

「ん、どうした朝恵」
「…」
「おい」
「…」

運転席の夜宵さんが私をジッと見つめながら更に声をかけた。

(あれ…あれ…)

「朝恵?」
「~~~っ」

何故か夜宵さんの声を訊けば訊くほどに体中が熱く火照って来るのを感じた。

「…えっ、と、朝恵?!」
「や…やよ、い…さぁん」

夜宵さんは私の思考状態を読み取ったのか、一瞬にして真っ赤になった。

「どうした、いきなり」
「夜宵さん…夜宵さんっ」
「~~っ」

私の甘ったれた強請り声に夜宵さんは何かを察したかのように、慌てて車を発車させた。

制限速度ギリギリのスピードでハンドルを捌いて行く。

其の間、熱っぽく浮かされた私の体は少しだけ落ち着きを取り戻し冷静になれた。


(何…なんだったの…今の)


夜宵さんを見て、声を訊いた途端に私の体はじれったい疼きを発した。

今すぐにでも、此処で夜宵さんに滅茶苦茶にされたい衝動に駆られ、みっともなく夜宵さんを求めてしまった。

(なんだろう、凄く体が…火照る)


もしかしてこれもある種のエステ効果なのかと考えるけれど、でもやっぱり訳が解らなくてただ疼く体をほんの少しの理性で抑えるしかなかった私だった。

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夜と朝のまにまに 51話



其の日の午後、私は予約時間10分前にお店の前に着いていた。

「す…凄い…」 

お店の外観を見た私はボソッとそう呟いた。

ウェディングエステの予約を取ったお店はまるでお城の様な建物だった。

3階建ての其れはよく見れば細部まで細かい装飾が施されていて如何にもお金持ちが通う類の場所だという雰囲気がありありと見受けられた。

(あわわ~なんか私…場違いなんじゃ)

其の圧倒的なオーラに呑まれ、中に入る事が躊躇われた。

しかし

(いやいや…折角の機会だし…予約しちゃったし…クーポン券あるし…)

そして何よりも

(夜宵さんに綺麗だって思われたい)

其の一心があればなんでもこなせるような気がした。


豪華な玄関ドアを手動で開けるとカランと軽やかな鈴の音が響いた。

「いらっしゃいませ」
「!」

ドアを開けて直ぐの処に背の高いほっそりとした美女が立っていた。

「ようこそいらっしゃいました、今瀬様」
「え…!あ、あの」

何故私の名前を知っているのだろうか、と疑問に思ったけれど

「本日のこの時間帯のご予約は今瀬様のみとなっておりますのでどうぞごゆっくり当店でお寛ぎになってください」
「は…はいっ」

この時間に予約しているのが私ひとりだけ──という事で私の名前が解った疑問は解決されたけれど…

(このお店にいる客が今は私だけ?!)

そんな事があるのだろうか、とまた新たな疑問が湧き上がった。

だけどこんなセレブ御用達みたいな雰囲気のお店がどういった予約の仕方をするのか解らない以上、そうなんだと云われた事を鵜呑みにするしかなかった。

「ではまずカウンセリングを受けていただきますので此方に移動お願いします」
「はい」

借りてきた猫の様に云われるまま私は其のスタッフさんの後について行った。

通された部屋もお店の外観同様、外国のお城の室内を思わせる洋風な作りをしていた。

(凄い!小物や調度品もひとつひとつがお高そう~~)

実に庶民的な考えをしてしまって少し汗ばんだ。

そんな私を気に留める事もなく、スタッフさんは淡々と話を進めて行った。

「本日はウェディングエステのお試しコースをご希望との事ですが、差し障りがなければお式の日取りなどお訊きしてもよろしいでしょうか?」
「あ、今年の12月24日に挙げる予定なんです」
「まぁ、クリスマスイブですか。ロマンチックでございますね」
「あははっ、ベタで恥ずかしいですけど」
「いえいえ、クリスマスに挙式されるお客様は意外に多いですよ。恥ずかしがる必要はございません」
「そう、ですか」

見た目と違って話し易い雰囲気のスタッフさんとの会話で私の緊張は徐々に解れて行った。

クーポン券で受けられるコースの内容をひとつひとつ丁寧に解説してくれたおかげで、初めに抱いていた不安要素はあっという間にかき消えていた。

「丁度お式まで三ヶ月ですので、もし本日のお試しコースがお気に召しましたら此方の三ヶ月ビューティースケジュールに沿ったウェディングエステを受けていただけたらと思います」
「ビューティースケジュール…ですか」

なんでも挙式三ヶ月前からウェディングエステを始める人が多くて、ホームケアでやれる事やエステでケアすべき内容のスケジュールが立て易いのだそうだ。

(凄いなぁ…なんだかやる前からお願いしたい気がしちゃう)

魅力的な言葉が次から次へと出て来て、すっかりやりたい気持ちに傾いて行っていた。

「では此方でお召し物を脱いであちらのベッドにうつ伏せで横になってください」
「は、はい」

カウンセリングを終え、別の部屋に通された其処は他の部屋とは違ってシンプルで落ち着いた内装でとてもいい匂いが漂っている部屋だった。

(アロマかな?凄くいい匂い)

部屋の中にある試着室のようなカーテンで仕切られている小さな場所で服を脱ぎ、備え付けられていた大きなタオルを身に纏いベッドにうつ伏せになった。


トントン


「はいっ」

『入室してもよろしいでしょうか』

「は、はい」

ノック音と共に聞こえた声に一瞬体を強張らせたけれど、静かに開いたドアから現れたのは、やっぱりスラリとした小柄な美しい女性だった。

「今瀬様、初めまして。今瀬様を担当させていただきます大野と申します。よろしくお願いします」
「こ、此方こそ、よろしくお願いします」

(ふわぁぁ、やっぱりこういうお店って美人ばかりいるんだ~~)

お店のHPでエステティシャンの顔写真を観た時から感じていたけれど、実際会って見ると想像以上の迫力があった。

職業柄そうなんだろうなと思った。

美を扱う職業。

其れを与える方は其れなりの容姿端麗さが求められるのだろう。

大野と名乗った彼女も私の周りにはいない──というか多分普通に過ごしていたらお目にかかれないような美女で変に緊張して来てしまった。

「初めてのエステで緊張されていますか?お肌が少し強張っていますね」
「っ!」

巻いていたタオルをそっと解かれ、大野さんの指がツツッと背中を這った。

「あぁ…なんて綺麗な天使の羽」
「天使の…羽?」
「はい、肩甲骨の事です。ほっそりとした背中に浮かぶ美しい肩甲骨のラインがまるで天使の羽みたいだという比喩です」
「な…なるほど」

徐々に大野さんの手つきが忙しく動いて行き、体のあちこちを確かめる様にあれこれ語って行った。

(もしかしてもう始まっているの?エステ)

何しろ初めての事で訳が解らず、ただ大野さんのされるがままになっていた。

「今瀬様に念入りなエステは必要がないと思われますが…そうですね、より一層愛される体に仕上げて行きましょうか」
「は…は、い…」

一通り全身をくまなくチェックされそう云ってもらえたのは嬉しかったけれど…

(なんだろう…なんだかもう既に…疲れが)

思った以上に濃厚に触れられたせいで既に私はグッタリしてしまっていた。

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