Evil Dolce

* AriaLien Sub BLOG *

◆Evil Dolceは樹野花葉(キノハナハ)の過去の作品を更新しているブログです。
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2017年11月

恋する贄 22話



今まで【好き】という感情を喰らった事はなかった。

俺の名前其の意味のままに好物は【敵意】と【憎悪】だったから。

神に帰属される者とされながらも、必要悪とされる存在に厭気がさす事もあった。

そんな頃に出逢ったちっぽけな人間の男。

外見は女と見まごうばかりの美しさを持った者だったが、酷い拷問を受け、痛めつけられていた其の体はボロボロだった。

最初は何故そんな目に遭っているのだと興味が湧いた。

近づき傍観している内に男から溢れる感情に呑まれる様になった。

こんな姿をしたやつが放出させる気は俺にとってはご馳走に違いない──そう思っていただけに、其の予想が裏切られる事になるとは思わなかった。

男からは微かな【絶望】を感じた。

だけど最も強い感情は【愛】と【希望】だった。

そんなボロ雑巾の様になっていてもまだ何かを望み、願うのかと呆れながらも目が離せなくなった。


──其の時は解らなかったけれど、俺はもうとっくに其の男に【恋】していたのだ






「羽衣…おまえは…俺の事を好きだと、云うのか」
「…けんちゃん」

けんちゃんが呆けた様な表情で私をジッと見ている。

瞬きひとつしないで私の顔を、穴が開くんじゃないかって位見つめている。

だけど其れは私を見ている──というより、私の中の、奥底にある魂を見ているんじゃないかと本能で解った。


其れに気が付いた瞬間、私の意識はなくなった──











『──今思う、君への気持ちを伝えよう』

「!」

『約束を守ってくれてありがとう。願いを叶えてくれてありがとう。あの方に…逢わせてくれてありがとう』

「…」

『君は最後まで酷かったけれど、今の君の事は素直に好きだと云えるんだ』

「…」

『前も今も僕は君のものにはなれないけれど…もしも次の世があるとしたら、其の時は僕は君のものになろう』

「!」

『だから其れまで待っていて欲しいんだ──マスティマ』

「───!」






けんちゃんを見つめている時、一瞬意識がなくなった。

其の間、私がけんちゃんに向かって何を喋ったかは記憶になかった。

ただ次に気が付いた時、けんちゃんは大声を上げて泣き叫んでいた。

日本語ではない、何処かの国の言葉で何度も同じ単語を連呼していた。


多分其れは…


(前世での私の名前…なのかな)


何故かそう思った私だった。



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恋する贄 21話



其の日の夜も何かの夢を見て、珍しく夜中にふと目が覚めた。

勿論見ていた夢の内容は覚えていない。

(…んっ)

其処でふと違和感を感じた。

ひとり部屋を与えられて、其処には私ひとりしかいないはずなのに誰かがいる気配がする。

(…誰、って…考えるまでもない)

そう、考えるまでもない。

この家には私ともうひとり、家主であるけんちゃんしかいないのだから。

「…けんちゃん?」
「…」

暗闇の中で空気が揺らいだ感じがした。

そして次の瞬間、ベッドに重さがかかりギシッとしなる音がした。

「羽衣」
「…」

私の体に重さがかかり、あっという間に掛け布団が剥がされた。

「こんな夜中に…何?」
「夜這い」
「…え」

私は考えている間もなく、けんちゃんの手によって着ていたパジャマを肌蹴させられた。

「! ちょっと…けんちゃ──」
「もう…我慢の限界だ」
「なっ──あっ!」

けんちゃんが露わになった私の胸を弄りながら、乳首を甘噛みした。

「あっ、あぁん」
「…」

其の甘い痺れが得もいわれぬ快感のスイッチをONにする。

だけど其のまま快楽に持って行かれそうになる気持ちを抑え込んで、私はけんちゃんに対峙する。

「止め…止めて…なんでいきなり…」
「俺は結構待ったつもりだ」
「え」
「本当はこの家に連れて来た其の日の内に奪ってやろうと思っていた」
「!」


奪うって…


其れって…


「そう、今、おまえが考えている通りの事だよ──危うくあいつに取られるところだったが…やっぱりおまえの処女は俺のモノだ」
「や、やぁ…やだ!」

恐ろしい事を云いながらけんちゃんは私の体中を舐めまくった。

「あっ、あっ…」
「んっ、羽衣、濡れているじゃないか」
「!」

けんちゃんの指が私の秘所にヌプッと差し込まれた瞬間、あり得ない嫌悪感が走った。

身を捩って其の動きを止めさせようとすればするほど、けんちゃんの指の動きは激しくなった。

「あ、あっ…あぁぁ」
「…羽衣」

グシュグシュと音を立てる其処から、何かが滴っているのが感覚として解った。

「んっ…ふぁ…」
「もう挿入れて欲しそうだな」
「!」

私の目に入った其の光景はおぞましいのひと言だった。

けんちゃんが露わにした自身の大きく太いモノを私の中に挿入れ様としていた。

「厭!厭…厭ぁぁぁぁ!」
「──」
「やだ…止めて、けんちゃん!こんな…こんなの…」
「──」
「私の好きなけんちゃんじゃない!」
「!」

瞬間、けんちゃんの動きは止まった。

「うっ…うぅ…」
「──今、なんて云った」
「……え」
「今、なんて云った」
「!」

泣きじゃくる私の腕を取って、けんちゃんは恐ろしい形相を私に近づけた。

「な、何…が…」
「おまえ…俺の事を」
「…私は…けんちゃんが…好き」
「!」
「だけど…其の好きは…恋とか愛とか…そういった種類のものじゃなくて…もっと…もっと深い処で感じる好き…で」
「…おまえは…俺を嫌っていないのか」
「き、嫌うだなんて…そんな事、一度だって思った事なかった」
「…」
「そりゃ私に意地悪な事をして…からかって…厭だなって思う事はあったけど…嫌いだなんて…思った事ない」
「…羽衣」
「私は…どうしてか解らないけど、けんちゃんの事、好き、だったんだよ」
「───っ!」

其の瞬間

「えっ」

目には見えない濃厚で、焼ける様に熱い気流の様なものが私とけんちゃんを取り巻いた。


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恋する贄 20話




こういうのって…なんていうんだっけ?

…監禁?

(兎に角犯罪…だよね)


「監禁じゃない。愛ある生活だ」
「…」

けんちゃんとふたりきりでこの家で生活する様になって一週間は過ぎていた。

「また私の考え、読んだの?」
「読んでいない。羽衣の顏を見れば解るんだ、何を考えているのか」
「…」
「俺とおまえの絆は其処までに深いという事だ」
「…」

普段のけんちゃんはあの私をからかう様な、親分みたいな幼馴染みとしての態度で私に接していた。

(…確かに監禁、とは違うのかな)

どういう作りになっているのか解らないけれど、けんちゃんの家という此処は信じられない位に広い家だった。

いくつも部屋があって、其の部屋ごとにイメージが違っていて置いてあるものも興味深いものばかりだった。

私にとっては本が沢山あるのが好ましかった。

大抵の時間を私を読書をする事で時間を費やしていた。

外には出してもらえなかったけれど、広い敷地内の庭を散策する事は出来たので窮屈な生活──という訳ではなかった。

「これって全部けんちゃんが悪魔の力で作ったものなの?」
「まあな。俺の場合、ちょこちょこ何かに力を使っていないとこの脆い人間の器を保っていられないんだよ」
「なんだか…いいんだか悪いんだか解らないね」
「…」
「そういうのって…この世界では生き難そうだなって…」
「羽衣」
「え…あっ」

庭を眺めていた私の顎をけんちゃんは持ち上げ、チュッとキスをした。

「…あんま可愛い事云うな」
「? 可愛い事…何か云った?私」
「…」

けんちゃんは私の顔をジッと見つめて、そして何処かにフラリと行ってしまった。

(…けんちゃん)


あの日、突然利久くんの前から連れ去られた時にはただただ絶望感しかなくて、泣いて喚いてけんちゃんに対して散々な態度を取った。

だけど意外な事にけんちゃんは私にされるがままで、私に酷い仕打ちをする事はなかった。

そんなけんちゃんの態度を受けて、私は少しずつこの異常な現状を冷静な気持ちで受け入れる事が出来ている──という状況だった。

(だけどだからといってずっとこのままでいい訳がない)

私は一日でも早く利久くんの元に帰りたかった。

大好きで、愛おしい利久くんの傍に戻りたいと、其の気持ちは日に日に大きくなって行く。

(利久くん…)

多分彼が私を助けに来る事は出来ないのだろうと思う。

出来れば助けに来て欲しい。

私をこの家から、けんちゃんの元から連れ出してくれればいいなと思う。

だけど其れはけんちゃんの悪魔としての力が強い限り、望んではいけない事だった。

(私自身が何とかしなくっちゃいけないんだよね)

今までは単純に前世から愛していた人と今生で廻り逢って、其のまま愛し合える日々が来るんだろうと思っていた。

だけど私は、前世の私が取引をした悪魔であるけんちゃんとの間に此処まで引きずる遺恨みたいなものが何かあったのかも知れないと思う様になった。

(生まれ変わる条件の中で何か…あったのかな)

鮮明な前世の記憶がない私にとっては、其れを知る事は不可能に近いのだけれど…

(けんちゃんとの事をなんとかしないと私は此処から出られないんだろうな)


秋も深まろうというこの時期独特の金木犀の香り漂う庭を見つめながら、私はそう思ったのだった。


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恋する贄 19話



正直にいうと僕は前世であった事を明確に覚えてはいなかった。

ただ、愛おしいあの子と来世で幸せになりたい。

男同士で愛する事に命を掛けなくてはいけない時代じゃない、平和な世の中であの子の生まれ変わりと幸せになりたいのだと願った事だけは覚えていた。

「其の願いをわたしが聞き届けたの」
「…君は…一体」
「わたしは天使よ」
「?!」

(天…使…?)

天使って…あの天国とかにいる?

「といっても今は人間の器を借りて転生したただの人間。天使としての力は全くないけれど」
「…」
「でも記憶だけはあるの。そして使命も覚えている」
「…使命?」
「あなたと羽衣がこの世で幸せになる事を見届ける事よ」
「!」
「わたしはあなたと、あなたが前世で愛した彼の生まれ変わりである羽衣とを結びつけるために同じ時代に転生して来た元天使、なのよ」
「…一体…僕は…」
「…」
「前世での僕は…何者だったんだ」
「…其れは、今のこの世に生きる古城利久としては不要の情報だから与えないわ」
「そんな」
「知らなくていいのよ、前の生の事なんて。知っても…苦しむだけ」
「…」

そんな云い方をされたらかえって気になる──そう云いたかったけれど、僕の胸の奥深くに眠る魂が前世での話を訊くなと警鐘を鳴らしている様な気がして其れ以上訊く事を止めた。

「懸命だわ、古城くん」
「…」
「今、あなたが考える事、する事は他にあるでしょう?」
「! そうだ、羽衣!羽衣は一体どうしたんだ」
「全てあの黒幸──いいえ、あの悪魔の仕業よ」
「…クロサキ?」
「全く、あなたも悪魔の幻術に取り込まれそうになっている」
「幻術?」
「このままだとあなたまで羽衣の事を忘れてしまいそうね」
「忘れるってそんな──」
「…はぁ、本当情けない」
「!」

ためいきをひとつついた白沢は僕の額を人さし指でトンッと突いた。

「───え」
「これくらいの緩い力なら使えるみたい、わたし」
「……あ…あ、あぁ…」

其の瞬間、あの日あった出来事が次々と脳裏に貼り付いて来た。

そしてあの男──黒幸の顔も、暴挙も、全てが思い出された。

「! 黒幸っ、あいつ──!!」
「ちょっと、落ち着きなさいよ、みんなこっちを見ているわよ」
「──あ」

そういえば此処は学食。

僕の大声に何事かと視線を送り、そして何かをささめいていた。

「…失礼」
「そうそう、こんな処ではもっと小声で」
「…羽衣は黒幸に連れ去られている。一刻も早く探し出さないと」
「そうなんだけど…あいつはわたしと違って転生した姿であっても悪魔としての力が使えるみたいでそう容易く居所を探し出せそうにないのよ」
「そんな」
「まさか羽衣が──前世の彼が悪魔と契約していただなんて…」
「…」
「こればかりは羽衣と悪魔との間でなんとかするしかない事態なの。其処にわたしやあなたは介入する事は出来ない」
「くそッ!」

ドンッとテーブルを叩いた其の音に、学食にいた生徒はまた僕に視線を送った。

「気持ちは解るけれど、悪魔にしても天使にしても一対一での契約は当事者同士で何とかするしかないの」
「…羽衣」
「今はただ、信じるしかないわ。羽衣を──あなたが愛したあの子の事を」
「…」


どれだけの犠牲を払ってこの世に転生して来たのかは解らない。

だけど其処までしたものならば、其れはどんな事をしてでも叶えたいと思うのだ。


僕にしても


羽衣にしても


(羽衣…)


白沢の云う様に今はただ、信じて待つしかないのだろうか──

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恋する贄 18話



其の異変は直ぐに気が付いた。


「…どうして」

学校に行っても彼女の名前を見つける事が出来ない。

其ればかりか

「え、奥山?って3組の奥山雄一の事?え、女子?や、そんな名前の女子、知らないけど」
「…」

クラスの男子に訊いても【奥山羽衣】という名前を知る者がいなかった。

(どういう事だ…)

朝、羽衣の家に行っても

『え、娘?君、何を云っているの。この家に娘はいないよ。何か勘違いしているんじゃないのかい』

出勤前の彼女の父親はそう云って怪訝そうに僕を見て去った。

(おかしい…何かがおかしい)

一夜にしてまるでこの世から【奥山羽衣】という存在が消えてしまったかの様になっていたのだ。

「…」

思い当るのはただひとつ。

多分あの男、クロサキの仕業だろう。

だけど何故か、クロサキ──という名前だけで、彼が何者で、羽衣とどの様な関係だったのか、明確な記憶が薄れて行っている様な気がした。

(確か羽衣の部屋で…愛し合っていて…其処で何かが訪ねて来て…)

「…」


羽衣と最後に逢った日がいつなのか


其の時に何が起こったのか


どうして羽衣と逢えなくなったのか


(…思い出せない)


「だらしがないわね!」
「!」

急に背中をドンッと叩かれ驚いた。

「あなた、また前と同じ事を繰り返そうとしているの?」
「…えっ、君は…」
「白沢清子──今はそういう名前よ」
「え」

(今は──といったか?)

「まんまと攫われたのね、黒幸に」
「…君、白沢は羽衣の事を──」
「知っているに決まっているでしょう、あの子の親友はこのわたしよ」
「!」

何がどうなっているか解らない中で、彼女の存在を認識している人に会えた事がこれ程に嬉しく思った事はなかった。



昼休みの雑多な学食で白沢と昼食を取りながら羽衣の事を話した。

「古城くん、あなた本当にわたしの事、覚えていないの?」
「え…」

唐突に切り出された白沢の言葉に戸惑う。

「…」
「あ、えぇ…と、確か…羽衣といつも一緒にいた…のとか」
「はぁ、本当にあなた、羽衣の事しか目に入っていなかったのね」
「…」
「まぁ、其れはいいわ。其れでこそっていう考えもあるし。他の女の事を明確に覚えているなんてあなたらしくないし」
「…あの、白沢さん、申し訳ないけれど、もう少し解りやすく云ってもらえると助かるのだけれど」
「──あなた、本当に忘れちゃっているのね」
「え」

白沢は持っていたスプーンを皿において、コップの水をひと口飲んでから徐に僕に云った。

「わたしはあなたをこの世に転生させた者」
「!」
「前世であなたが願った望みを、あなた自身を供物にしてわたしが叶えてあげたのよ」
「なっ」

其れは衝撃のひと言だった。

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