Evil Dolce

* AriaLien Sub BLOG *

◆Evil Dolceは樹野花葉(キノハナハ)の過去の作品を更新しているブログです。
◆不思議要素のある恋愛物語をメインに綴っています。
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2017年11月

恋する贄 27話



利久くんと恋人同士になってから毎日は幸せで満ち溢れたものになった。

利久くんと付き合う様になった高校生時代は、他の女子たちからのやっかみや厭味攻撃なんかがあったりしたけれど、利久くんと清ちゃん、ついでにけんちゃんも加わって、そういう事から私を守ってくれたお蔭で愉しい高校生活が送れた。

私たち4人は不思議な縁で結ばれて、大学も同じところに通った。

利久くんは人を守る立場の人間になりたいと云って弁護士を目指していた。

其れを訊いたけんちゃんは「じゃあ俺は検事になる」と云って、利久くんに対して訳の解らない対抗心を燃やしていた。

清ちゃんも利久くん同様、人を病から救いたいという志から看護師を目指してた。

そんな立派な夢を抱いている大切な人たちとは対照的に、これといった夢のなかった私は少し気後れしていた。

だけど

「羽衣は羽衣のままでいい」

と、利久くんを始め、みんながそう云ってくれたお蔭で私は迷う事無く【自分だけでは叶えられない夢】を思う様になった。

そんな私はごく普通に大学で勉強をして、ごく普通の企業に就職して、利久くんよりも一足先に社会人になっていた。

社会人になってから半年が過ぎた頃、私の【自分だけでは叶えられない夢】が今、現実的になりそうな状況を迎えていた。




「羽衣」
「あ、利久くん」

私が社会人になり、利久くんが法科大学院に進学してからふたりで逢う時間は今まで以上に少なくなっていた。

この日、私が利久くんをカフェに呼び出したのも実に一週間ぶりの事だった。

「ごめんなさい、勉強が忙しいのに我儘云って」
「何云ってるの?羽衣からの誘いは僕にとって最優先事項だよ」
「…ありがとう」

いつまで経っても優しい利久くんに甘えっぱなしの私。

自立した女性になりたいと思いつつも、利久くんの「羽衣には甘えられたいんだ」という言葉につい自分自身を甘やかしてしまう私だった。

「其れで…あの、今日、呼び出したのは…」
「この間の返事、聞かせてくれるんでしょう?」
「!」


実は一週間前、私は利久くんからプロポーズされていた。

お互い進む道が違って、逢う時間が少なくなるにつれて今までする事がなかった要らぬ心配をする様になったりして、ほんの少しだけ、ふたりの間に細い溝が出来つつあった。

勿論、そんな溝でどうにかなってしまうほどに私たちの間にある絆は脆くない。

其れが解っているから今日まで気丈に私は振る舞って来れた。

だけど

「僕が限界なんだ」

そう絞り出される様に云った利久くんの言葉に私は胸を詰まらせた。

「利久くん…」
「正直羽衣をお嫁さんにするのは僕がちゃんと弁護士として収入を得られる様になってから、と決めていた」
「…」
「其れまでは多少逢う時間が少なくても、今までの様に傍に居られなくても、おかしな話、ずっと体が離れていた時に比べれば耐えられる事なんだと思っていた」
「…」
「だけど…もう限界だ」
「…利久くん」
「僕の知らない世界に身を置く君の事が気になって、かえって勉強は手に着かない。君に逢いたくて、抱きたくて、愛し合いたくて…そんな煩悩ばかりが僕を支配するんだ」
「り、りり、利久くん~~」

思いっきり恥ずかしい事を云われている──と思いつつも、利久くんの其の正直で素直な気持ちの吐露は私こそが感じていた気持ちと同じだったから嬉しく思った。

「だから羽衣、お願い…僕の傍にいて僕を支えて欲しい」
「!」
「僕のお嫁んさんになって欲しい」
「利久、くん」


一週間前と同じ様に告白された。

あの時は素直に返事が出来なかった。

利久くんの事を考えたら、こんな大事な時期に結婚していいものかどうか迷ったから。


──だけど


一週間考えて、悩んで、気持ちを解放した結果、私が出した結論はやっぱりたったひとつしかなかったのだった。


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恋する贄 26話




まるで非現実的な数十日間を過ごした。

色んな事が一度に私たちを襲い、呑み込んだけれど、其の苦難を私たちは共に乗り越えたのだ。


「利久くん」
「羽衣」

待ち合わせの時間10分前には着く様に来たつもりだったのに、其処には既に利久くんが待っていた。

「ごめんね、随分待たせちゃった?」
「全然待っていないよ──というかまだ待ち合わせ時間前だよ」
「私に其れを云うの?」
「あぁ…其の…僕は気持ちが浮かれていて…家に居てもソワソワしていたから、つい、早目に…」
「ふふっ、嬉しいなぁ」
「…」

私も同じ気持ちだったから、思わず声を上げて笑ってしまった。

そんな私をジッと見つめる利久くん。

「あ、ごめんなさい、笑っちゃって…でもこの笑いは──」
「やっぱり羽衣は笑顔が一番可愛い」
「えっ」

そっと繋がれた手がグイッと引っ張られ、私の体は利久くんとくっつくほどに近くなった。

「羽衣…愛しているよ」
「なっ」

不意打ちで囁かれて一瞬にして真っ赤になってしまった。

同じく待ち合わせで待っていた数人が此方を見てささめいていた。

「ちょ、利久くん!う、嬉しいけど…こんな往来で──」
「僕は今まで出来なかった素直な気持ちを表現したいんだ」
「…」
「人を好きになる事。好きと言葉にする事。好きを行動で表す事。其の全てを羽衣に対してしたいんだ」
「…利久、くん」

幸せという気持ちが胸いっぱいに広がっている。

幸せすぎて涙が溢れそうになる。

「あ!泣かないでよ、羽衣!君に泣かれると僕は──」
「うん…うん、我慢する~~」

(そう、泣いていちゃダメ)

だって今日は利久くんとの初デートの日なんだから!


『知り合いからもらったの。これあげるから古城くんと行って来なさいよ』

清ちゃんに利久くんとの事を話したらすごく喜んでくれた。

そしてお祝いにと私に遊園地のチケットをくれた。

其の清ちゃんからのお祝いをありがたく使わせてもらうのだ。


「清ちゃんに感謝しなくっちゃ」
「…そうだね」
「清ちゃんはね、ずっと私の相談に乗ってくれていたの。ねぇ、今度清ちゃんも誘って何処かに行かない?」
「いいけど…出来れば僕は羽衣とふたりっきりの方がいいかな」
「ふふっ、利久くんの気持ち、嬉しいけどね、利久くんにも私の親友を好きになって欲しいの」
「羽衣…」
「多分…今、私がこうやって利久くんと一緒に居られるのは清ちゃんがいてくれたからだと思うから」
「…友だち思いなんだね、羽衣は」
「そんな事は…これって当たり前じゃないのかな」
「ううん、いいと思うよ。羽衣は本当に心が綺麗だね」
「!」

今日はまだ利久くんと出逢ってからほんの10分足らずしか経っていないのに…

既に私にとっては蕩けてしまう位の甘い言葉を何度も囁かれて、ドキドキで胸が苦しかった。

(私、今日一日利久くんと一緒に居て、心臓、壊れちゃわないかな~~)

そんなお馬鹿な心配をするほどに私は浮かれていたのだった。


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恋する贄 25話




(あぁ…くそ!あいつ、羽衣をいい様に甚振りやがって…!)

いい加減羽衣との感覚を共有するのは止めようとは思うのだが

(今はこれだけが俺と羽衣の繋がり──だからなぁ)


この世ではもう手に入れる事は出来ない人間。

俺らしくもない執着。

前世から追いかけてまで手に入れようと思ったのは多分、これが最初で最後。


「まるでストーカーね」
「…」

羽衣のマンションを見上げながらぼんやりしていた俺の傍に、いつの間にいたのか気が付けば其の気持ち悪さは一層増した。

「あんた、本当に羽衣を諦めたの?」
「おまえ…あの男と契約した天使か」
「あら、ずっと気が付かなかったの?まぁ今は可憐な女子高生だけどね」
「あまりにも人間臭くて気が付かなかったぜ」
「本当ひと言余計よ、マスティマ」
「俺を知っているのか」
「知っているに決まっているわよ──わたしを誰だと思っているの」
「羽衣の友だちの白沢だろう」
「えぇ、そうよ。今はね──でも…ふぅん、解らないんだ」
「そんな事どうでもいい」
「失礼しちゃうわね、本当昔から厭な奴」

まるで天使らしくないこの女と話していると腸が煮えくり立ってくる。

「おまえ、なんであの男を転生させた」
「…あんた、羽衣に嘘を云ったわね」
「何の事だ」
「あんたが古城利久を転生させたみたいな事、云ったでしょう」
「あぁ、羽衣に恩着せがましく恩を売るつもりで嘯(ウソブ)いてやった」
「本当悪魔って姑息ね」
「おまえが余計な事をしたお蔭で随分予定が狂ったぜ」
「でもあんた、欲しかった報酬とやらは羽衣から貰えたんでしょう?」
「…」


──報酬


『今、奥山羽衣として生きているために支払った対価がどの様なものか──全て話して解った上で俺はおまえから報酬をいただこう』


本当は報酬なんてもの、この世では存在しない。

全ては前世で貰ったもの、其の全てで契約は成立していた。

ただ

ただこの世に羽衣と共に転生して、共に過ごすうちに芽生えた欲。

欲しくて堪らなくなったのだ。

前世での記憶がないのをいい事に俺は羽衣に強請ったのだ。


【次に繋がる約束】


──そして其れを羽衣は叶えてくれた


「もう充分でしょう?あんたもこの世ではおとなしくあのふたりの幸せな生涯を見届けるに徹する事」
「おまえ、本当なんであいつを転生させた」
「…」
「其れに元のおまえは──本当の正体はなんだ」
「わたしの事はどうだっていいのよ」
「…」
「じゃあね、わたしはこの世での春を謳歌するわ。折角得た人間としての生なのだから」
「…」
「あんたも折角其の器を得たんだから。あんたの代わりに昇天した【黒幸眷蔵】の分まで全うに生きなさいよ」
「煩い、おまえに云われたくない」


金輪際顔も見たくないと思いつつも、学校に行けば厭でも顔を合わせる事になるのだと思ったら頭が痛くなった俺だった。

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恋する贄 24話




夕暮れから漆黒の夜になる境──


カーテンの隙間から覗く橙色の光は、やがて月の光で淡い明るさをもたらす。


「あ…あっ…んっ」
「はぁ、はぁ…うっ──」

私は今、破瓜の痛みに耐えていた。

一度は好きな人に捧げられないかも知れないと危惧した事もあったけれど、今、この瞬間を迎えられた事は、痛みによる恐怖心なんかを遥かに超えて、嬉しいとさえ思える痛みだった。


「ふぁ、あっ!あぁぁっ」
「くっ──あ…」

ズズッと私の奥深くまで利久くんのモノが収まったのが解った。

「あ…あっ…」
「…羽衣…全部、挿入ったよ」
「うん…うん…」
「…羽衣」
「私…幸せ…すごく、幸せ」
「羽衣…」

ボロボロと泣いているのは痛いからじゃない。


何故か魂が物凄く揺さぶられて…


私の意識とは違う感情が涙を流させている様だった。



「あ、あぁぁん、あんあん」
「あ…羽衣…気持ちいいよ…んっあっ」

激しく振られる利久くんの腰の動きに合わせる様に、私の腰も自然と動いた。

初めての快楽。

これがこんなにも気持ちのいいものだなんて知らなかった。

「利久くん…利久…く…」
「羽衣…羽衣──」

快楽のまま身を任せていたら、其の大きな波はあっという間に私を呑み込んで行ったのだった。




「羽衣、痛くない?」
「うん…大丈夫」

初めての行為は幸せな内に終わってしまった。

だけど私たちは放れ難くて何度も何度も愛し合った。

其の結果、情けない事に私の足腰はガクガクと震え、まともに起き上がる事も出来なかった。

「ねぇ、キッチン借りてもいい?」
「え、うん、勿論」

利久くんは平然と起き上がって私の部屋を出て行った。

(はぁ…やっぱり男の子って体力があるんだなぁ)

利久くんは剣道で鍛えているという事もあって、体力がある事は勿論、其の肉体、肢体は美しいものだった。

(あの腕に抱かれていただなんて…信じられない)

先刻までの行為を彷彿とさせて、私の胸はドキドキ高鳴る。

そして治まっていたはずの秘所の疼きが再開されたのを感じた。

(私、厭らしいなぁ~~)


「どうしたの?顏、赤いよ」
「えっ!」

いつの間にか部屋に戻って来ていた利久くんに驚いた。

「な、なんでもないよ!…其れより何持っているの?」
「はい、どうぞ」

利久くんが渡してくれたマグカップにはホットミルクが入っていた。

「わぁ、ありがとう!」
「のど、乾いていると思ったから。冷蔵庫の中の牛乳使って…即席なんだけど」
「うん、乾いていた。ありがとう、利久くん」

大好きなホットミルク。

(どうして私がこれを好きだって知っていたんだろう?)

「よかった、なんとなく羽衣はホットミルクが好きなんじゃないかなと思っていた」
「…」

其れは何気ない呟きだったけれど、私はそんな曖昧な答えで充分幸せを感じたのだった。


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恋する贄 23話



何故急にけんちゃんが私を解放したのかよく解らない。


『あぁ、もういい。おまえはとっととあの男の元に行って精々この世の春を謳歌するんだな』


(あれってどういう意味よ!)


『仕方がないから此処では俺はおまえにとって頼りがいのある幼馴染みというポジションに甘んじてやる。だけど次は──容赦しないからな』


けんちゃんの家から出る間際に云われたあの言葉の意味もよく解らない。

(結局この騒ぎは何だったのよ!)

あれほど私に執着していたけんちゃんはやけにあっさりと私を諦めた。

そして外の世界から隔絶されていた私は、あっという間に元の状態に帰されていた。

(けんちゃんて…本当に悪魔、なんだなぁ)

普段はあまりそう感じないけれど、やっぱり端々で其れと思い知らされる事があった。




私は約一週間ぶりに我が家に帰って来た。

ダイニングテーブルには

【急な出張で帰りは明日の夜以降になります。昨日羽衣が作ってくれた煮物はお弁当のおかずに持って行きます。ごめんね】

と書かれていた父からのメモが残されていた。

其れはごく普通の日常が続いていた事を示唆する内容だった。

(私がいない間、けんちゃんが何事もない様にしてくれたんだ)

そんな事を思ったらホッと気持ちが緩んで、ソファに倒れ込む様に沈んだ。

「はぁ…やっぱり我が家が一番いいよ」

しばらく離れていた住み慣れた家の匂いを堪能していると『ピンポーン』とインターホンが鳴った。

「…誰」

私の動作は鈍く、のそのそとしている間にも二度三度とインターホンが鳴った。

「はい」

『羽衣?!羽衣なのか!』

「──え」

インターホン越しに聞こえた声に、今まで薄れていた気持ちが一気に溢れ出して来た。

私は返答する代わりに急いで玄関ドアを開けた。

「り、利久…くん」
「羽衣!」
「っ」

私の顔を見た瞬間、利久くんは勢いよく私に抱き付いた。

其の弾みで私たちは玄関先に縺れ込む様に倒れた。

「痛っ」
「あっ、ごめん!何処か痛くした?!」
「ううん…だ、大丈夫」
「…」
「…」

2、3回会話を交わした後、急に言葉がなくなってジッと見つめる事数秒。

「羽衣」
「んっ」

利久くんの熱い唇が私のものと重なった。

「よかった…戻って来てくれて…本当によかった」
「…利久くん」
「心配したんだ。だけどどうする事も出来なくて…ただ毎日羽衣が無事に戻って来てくれる事を願うだけしか出来なくて」
「…」

キスの合間に交わされる利久くんの言葉に涙が出そうになった。

「羽衣、羽衣」
「もう大丈夫だよ…もう、私は利久くんから離れないから」
「…羽衣」
「利久くん…」


そして私たちはあの日、途中で終わってしまっていた行為の続きを再開する流れに呑まれた。


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