まるで非現実的な数十日間を過ごした。

色んな事が一度に私たちを襲い、呑み込んだけれど、其の苦難を私たちは共に乗り越えたのだ。


「利久くん」
「羽衣」

待ち合わせの時間10分前には着く様に来たつもりだったのに、其処には既に利久くんが待っていた。

「ごめんね、随分待たせちゃった?」
「全然待っていないよ──というかまだ待ち合わせ時間前だよ」
「私に其れを云うの?」
「あぁ…其の…僕は気持ちが浮かれていて…家に居てもソワソワしていたから、つい、早目に…」
「ふふっ、嬉しいなぁ」
「…」

私も同じ気持ちだったから、思わず声を上げて笑ってしまった。

そんな私をジッと見つめる利久くん。

「あ、ごめんなさい、笑っちゃって…でもこの笑いは──」
「やっぱり羽衣は笑顔が一番可愛い」
「えっ」

そっと繋がれた手がグイッと引っ張られ、私の体は利久くんとくっつくほどに近くなった。

「羽衣…愛しているよ」
「なっ」

不意打ちで囁かれて一瞬にして真っ赤になってしまった。

同じく待ち合わせで待っていた数人が此方を見てささめいていた。

「ちょ、利久くん!う、嬉しいけど…こんな往来で──」
「僕は今まで出来なかった素直な気持ちを表現したいんだ」
「…」
「人を好きになる事。好きと言葉にする事。好きを行動で表す事。其の全てを羽衣に対してしたいんだ」
「…利久、くん」

幸せという気持ちが胸いっぱいに広がっている。

幸せすぎて涙が溢れそうになる。

「あ!泣かないでよ、羽衣!君に泣かれると僕は──」
「うん…うん、我慢する~~」

(そう、泣いていちゃダメ)

だって今日は利久くんとの初デートの日なんだから!


『知り合いからもらったの。これあげるから古城くんと行って来なさいよ』

清ちゃんに利久くんとの事を話したらすごく喜んでくれた。

そしてお祝いにと私に遊園地のチケットをくれた。

其の清ちゃんからのお祝いをありがたく使わせてもらうのだ。


「清ちゃんに感謝しなくっちゃ」
「…そうだね」
「清ちゃんはね、ずっと私の相談に乗ってくれていたの。ねぇ、今度清ちゃんも誘って何処かに行かない?」
「いいけど…出来れば僕は羽衣とふたりっきりの方がいいかな」
「ふふっ、利久くんの気持ち、嬉しいけどね、利久くんにも私の親友を好きになって欲しいの」
「羽衣…」
「多分…今、私がこうやって利久くんと一緒に居られるのは清ちゃんがいてくれたからだと思うから」
「…友だち思いなんだね、羽衣は」
「そんな事は…これって当たり前じゃないのかな」
「ううん、いいと思うよ。羽衣は本当に心が綺麗だね」
「!」

今日はまだ利久くんと出逢ってからほんの10分足らずしか経っていないのに…

既に私にとっては蕩けてしまう位の甘い言葉を何度も囁かれて、ドキドキで胸が苦しかった。

(私、今日一日利久くんと一緒に居て、心臓、壊れちゃわないかな~~)

そんなお馬鹿な心配をするほどに私は浮かれていたのだった。


kaben
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