(あぁ…くそ!あいつ、羽衣をいい様に甚振りやがって…!)

いい加減羽衣との感覚を共有するのは止めようとは思うのだが

(今はこれだけが俺と羽衣の繋がり──だからなぁ)


この世ではもう手に入れる事は出来ない人間。

俺らしくもない執着。

前世から追いかけてまで手に入れようと思ったのは多分、これが最初で最後。


「まるでストーカーね」
「…」

羽衣のマンションを見上げながらぼんやりしていた俺の傍に、いつの間にいたのか気が付けば其の気持ち悪さは一層増した。

「あんた、本当に羽衣を諦めたの?」
「おまえ…あの男と契約した天使か」
「あら、ずっと気が付かなかったの?まぁ今は可憐な女子高生だけどね」
「あまりにも人間臭くて気が付かなかったぜ」
「本当ひと言余計よ、マスティマ」
「俺を知っているのか」
「知っているに決まっているわよ──わたしを誰だと思っているの」
「羽衣の友だちの白沢だろう」
「えぇ、そうよ。今はね──でも…ふぅん、解らないんだ」
「そんな事どうでもいい」
「失礼しちゃうわね、本当昔から厭な奴」

まるで天使らしくないこの女と話していると腸が煮えくり立ってくる。

「おまえ、なんであの男を転生させた」
「…あんた、羽衣に嘘を云ったわね」
「何の事だ」
「あんたが古城利久を転生させたみたいな事、云ったでしょう」
「あぁ、羽衣に恩着せがましく恩を売るつもりで嘯(ウソブ)いてやった」
「本当悪魔って姑息ね」
「おまえが余計な事をしたお蔭で随分予定が狂ったぜ」
「でもあんた、欲しかった報酬とやらは羽衣から貰えたんでしょう?」
「…」


──報酬


『今、奥山羽衣として生きているために支払った対価がどの様なものか──全て話して解った上で俺はおまえから報酬をいただこう』


本当は報酬なんてもの、この世では存在しない。

全ては前世で貰ったもの、其の全てで契約は成立していた。

ただ

ただこの世に羽衣と共に転生して、共に過ごすうちに芽生えた欲。

欲しくて堪らなくなったのだ。

前世での記憶がないのをいい事に俺は羽衣に強請ったのだ。


【次に繋がる約束】


──そして其れを羽衣は叶えてくれた


「もう充分でしょう?あんたもこの世ではおとなしくあのふたりの幸せな生涯を見届けるに徹する事」
「おまえ、本当なんであいつを転生させた」
「…」
「其れに元のおまえは──本当の正体はなんだ」
「わたしの事はどうだっていいのよ」
「…」
「じゃあね、わたしはこの世での春を謳歌するわ。折角得た人間としての生なのだから」
「…」
「あんたも折角其の器を得たんだから。あんたの代わりに昇天した【黒幸眷蔵】の分まで全うに生きなさいよ」
「煩い、おまえに云われたくない」


金輪際顔も見たくないと思いつつも、学校に行けば厭でも顔を合わせる事になるのだと思ったら頭が痛くなった俺だった。

kaben
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