家族のいる前でいきなり先生にキスされた。


「「なっ!!」」
「きゃあ♪」


「?!」


(お父さんとお兄ちゃんの驚き振りは解るけれど、お母さんの♪マークはなんだろう?)


「んっ!んー!」
「──ふっ」

強く押し付けられた唇はほんの数秒で離された。


「せ…せせせせせ先生っ!」
「真っ赤だな、梨香」
「!」


いきなりの行為に怒りたい気持ちでいっぱいだったのに、不覚にも暗闇のせいですっかり本性ヴァージョンになっていた先生にドキッとした。


そんな先生としばらく見つめ合っていると急にグイッと肩が後ろに引っ張られた。


「えっ!」
「おまえ、梨香から離れろ!」
「お、お兄ちゃ──」

どうやら兄が私を先生から引き離そうとしていたらしい。


「離れない」
「えっ!!」

先生は益々力を入れてギュッと膝の上の私を抱きしめた。


「触るんじゃねぇ!梨香は俺のだっ!」
「違う、俺のだ」

前と後ろで力の掛け合いをされて私の体は引き攣れる様な痛みを感じた。


「い、痛ぁい!」

思わず声に出して呻くと、兄がパッと手を離した。


其の弾みで私は先生の胸の中にグッと抱き込まれた。


「り、梨香…」
「俺の勝ちだな」
「おまえ馬鹿かっ!梨香が痛がってんだから離すのは当たり前だろう!」
「あぁ、そうだ。そもそもおまえが引っ張るから梨香が痛がったんだろう。だからおまえが離すのが道理だ」
「何を云ってやがる」


先生と兄の間のいがみ合いが果てしなく続きそうだと思った瞬間、バッと明かりがつき一瞬目が眩んだ。


「うっ、眩しい!」

私を抱きかかえながら先生は唸った。


「あなたぁーブレーカー上げて来たわよー」
「あぁ、ありがとう美紀子」

呑気な声色の母の言葉で、母が電気を点けたのだと解った。


「やぁ、明るくなりましたね」
「…」

先生は相変わらず私を膝に乗せているけれど、すっかり口調は昼間モードの柔らかいものになっていた。


「おまえ…一体何者なんだよ」

先生の変わり様を目の当たりにした兄が困惑の表情を浮かべながら私達に向かって呟いた。


「えーっと、すみません、ご紹介が遅れまして。僕もみなさんと同じ様に人間界で暮らしているヴァンポーリュ出身の吸血鬼です」


ヘラッと笑いながら緊張感の欠片もない口調で先生はサラッと自己紹介をしたのだった。

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