いきなり部屋の電気が消えた。


「えっ?!な、何っ」

私は思わず声を上げてあからさまに狼狽たえた。


すると急にギュッと手を引かれて柔らかなところに座らされた。


「えっ…」
「怖がるな。大丈夫だ」
「!」

耳元で囁かれた声が先生のものだって直ぐに解った。


冷静になって周りを見渡すとぼんやり視界が晴れて来て、薄暗いなりにも状況が把握出来る様になった。

当然暗闇に慣れているお父さんは平然としているし、お母さんもお父さんの隣で怖がる振りをして愉しんでいるみたいだった。

そして私が今座っているのは先生の膝の上だと知って一気に恥かしさが込み上げて来た。


「! せ、せせせ先生──」
「ふふっ、教師としての挨拶はもう充分──といったところか?」
「え?」

私の言葉を遮り、先生は何処か遠くにいる人に向かって話しかける様な云い方をした。


すると

「おまえ、何者だ」

リビングのドアを開けて入って来たのは、小さなスタンドランプを手にした兄だった。


鋭い視線は其のまま先生に向けられていた。


「隗?おまえが電気を…ブレーカーを落としたのか?なんでこんな事を」

父が兄に向かって話し掛けた。


だけど兄は先生から視線を外さない。


そして其のまま父の質問に答えた。


「こいつの正体を知るためだよ」
「は?正体…って」

訳が解らないといった風の父を尻目に今度は私と先生に向かって続ける。


「おまえ、ただの教師じゃねぇよな。梨香の体に染み付いている匂いと同じ匂いがする」
「!」

私は一瞬にして硬直した。


「どういう事だ。隗、おまえ先刻から何を──」
「父さん。梨香はこの男にマーキングされている」
「なっ!」
「お、お兄ちゃん?!」

いきなりマーキングと云われて恥かしい気持ちと恐怖心が一緒に襲って来た。


「其れは…どういう事だ!」

父は今までの柔和な態度から一転、先生に対して凄まじい猜疑心を露にした。


私は先生の膝の上から立ち上がろうとしたけど、腹部に回された先生の腕がギュッと締まって身動き出来なかった。


「貴方は…梨香の担任じゃないのか?」

相手が何者が解らない状況で、父はどの様な言葉掛けをしたらいいのか戸惑っているみたいだった。


「あ、あのね、お父さん──実は」

其の状況を打破するために私が先生との事を話そうとした瞬間


「!」

急に顎に手が振れ、顔を先生の方に向けられた──と思ったら直ぐに唇に温かく柔らかな感触。


(キ、キキキキス──?!)


私は家族の前で先生とのキスシーンを曝け出してしまっていた。

00a21
◆ランキングサイトに参加しています。
其々クリックしていただけると更新の励みになります。

恋愛ランキング
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村