結局私は先生の求愛を受け入れた。


先生は吸血鬼としてはごく当たり前の考えから私の事を誤解していて──まぁ、かなり自分勝手に思い込んで私に対して酷い事をしたけれど、誤解が解けた今ではすっかり人が変わった様に私に優しく甘くなった。

「梨香ちゃん、今度の休みに自宅に行ってもいいかな」
「──は? い、家…ですか?」

昼間の先生は私の事を『梨香ちゃん』と呼び、学校内でも人目がなくなると直ぐにスキンシップを取ってくる甘い人になっていた。


今も放課後の人気のなくなった校舎の片隅にある狭い資料室でピッタリくっつかれていた。


「そう、ちゃんとご両親に挨拶したいなと思って」
「あ…挨拶…」
「勿論結婚を前提としたお付き合いを赦してもらう挨拶だよ──んっ」

チュッと音を立てながら私の首筋にキスをして来た。


「あっ…ん」
「あぁ…ダメだ、そんな甘い声出さないで。僕、堪らなくなるよ」
「…だ…だって」

矛盾した事を云っているなぁと思いつつも、なんとか先生から受ける愛撫に声を押し殺すようにして耐えた。


──実は


私達はまだ最後の一線を越えていなかった。


先生が結婚するまでは私の純血を守りたいと云ったからだ。

一見紳士らしい優しい提案の様だけれど、どうも先生は処女としての私をしばし満喫したいらしい雰囲気が言葉や態度の端々から窺えた。


「あぁ、梨香ちゃん…こんなに可愛くてセクシーな体つきなのにまだ男を知らないだなんて…ゾクゾクするよ」
「……」


ちょっと…


いや、かなり変態っぽい発言ばかりで私はしばし鳥肌を出現させてしまう事があった。

「僕の梨香ちゃん…僕だけの梨香ちゃんだ」
「先生…」

だけどこうやって所有物の様に想われるのは悪い気がしなかった。


私は好きな人に一途に想われたいとずっと思っていた。

だから多少其の愛情の示し方が変態的でも赦せてしまう程に私は先生の事が好きだったのだ。




「えっ、先生が?──季節はずれの家庭訪問かしら?」

其の日帰宅した私は母に先生が今度の休みに家に来る事を告げた。


すると呑気にそんな返しをした。


「ま…まぁ…そんな感じかな…でね、お父さんにも会いたいって云っているんだけど」
「私にもか?なんだ梨香、何か悪い事でもしたのか?」
「違うよ、してないよ!」
「まぁいいけど…でも昼間は都合が悪いから、仕事に行く前の宵の頃にしてもらわないと」
「其処ら辺は大丈夫。ちゃんとお父さんの事情も知ってるから」
「は?事情を知ってるって」
「あっ!コ、コンビニの店長だっていう事を知ってるって事で──」
「あぁ、そうか。なら其の様に」
「…うん」


両親には先生が吸血鬼だという事を云っていない。


先生が自分の口から云いたいと云っていたから。


「其れよりあなた、お体大丈夫?最近なんだか益々お疲れよ?」
「あぁ、心配要らないよ。ちょっと厄介な仕事があるだけで」

「…」


父は数週間前から外出する機会が多くなって忙しそうに動いていた。


全てはヴァンポーリュからの手紙が来てから──あの時から父の様子が少しずつおかしくなった。


(お父さん、大丈夫かな…)


気になる事や心配する事、不安な事はあったけれど、とりあえず今は先生の事を両親に認めてもらう事が私の中では最優先事項になっていた。


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