世の中は目に見えている事が全てではない。

目には見えない日常というものも存在している。

知らなければ其れでいい。

関わりがなければ其れでいいのだ。


ただ


一度其の世界に掴まればきっと逃げる事は出来なくなる。


知らないうちに入り込まない様に気をつけるがいい───






「おいおい…国王が実は影武者だったってすごい騒ぎになっているぞ」
「え、本当?いつから?」
「えーっと何々…なんでも其の影武者の話だと国王は20年前から行方不明だと」
「そんなに長い期間?!誰も気がつかなかったっていうの?」
「まぁ、王様の顔なんてごく一部の王族しか解らないからじゃないか?」
「庶民には縁遠い話って事なのね」


「おはよう、お父さんお母さん」

いつもの朝の団欒に加わるためにダイニングに降りて来た。


「あら梨香、おはよう」
「おはよう梨香」

両親は話を止め、私の方に向き合った。


ふたりの間には新聞が置いてあった。

新聞は新聞でも普通の新聞じゃない。

其処には【ヴァンポーリュ新聞】と書かれている。


【ヴァンポーリュ】というのはお父さんの生まれ故郷の名前だ。


生まれ故郷というか…

生まれ世界──



「あぁ──もう随分陽が昇って来たな。私はそろそろ寝るよ」
「おやすみなさい、あなた」
「おやすみなさい、お父さん」
「美紀子、梨香、おやすみ」

父は母と私に其々チュッと頬にキスして寝室に向かって行った。


「私はそろそろ学校に行くね」
「ご飯は?」
「今日はいいや。お昼ご飯友だちと食べる約束しているから」
「そうなの、解ったわ」

私は母に見送られて学校へと向かった。




──此処までの流れでなんとなくお解かりいただけただろうか?


よく解らない、という方のために簡単に説明しよう。


私は篠宮 梨香(シノミヤ リカ)

高校2年生の17歳。

家族構成はごく普通に父母、兄がひとり。

父はコンビニの店長をしていて主に夜中勤務している。

母は専業主婦だけど時々趣味で内職をしている。

兄は──

兄はまた今度説明する事にする。


で、こんなごく普通の一般家庭の我が家が唯一普通じゃないのが、実は父が吸血鬼だって事──



「…ベタ過ぎる」


そう、私の父はヴァンポーリュという世界の吸血鬼種族だった。


よくある話だ。

世界を飛び越えフラフラと人間界に遊びに来ていた放浪吸血鬼だったお父さんは、空腹を満たすために血を吸おうと襲った人間に間違って恋をしてしまったのだ。

其れが私の母だった。

だけどヴァンポーリュという処は人間に恋する事はタブーとされていた。

其れはそうだろう。

吸血鬼から見たら人間は単なる食料なのだから。


そんな下等な人間と愛し合ってしまった父は当然罪に問われた。

裁判の末死罪という判決が下るのだが、其の父を助けたのがヴァンポーリュ国王の側近という人だった。

側近の人はある事を条件に父の命を救った。

其の条件というのは生態のよく解っていない人間について調べ、定期的に報告するという事。

食料としての人間の生態を知る事により、効率よく食料摂取を図ろうという重要なんだか重要じゃないんだかよく解らない条件だった。

だけど其の条件のお陰で制限つきながらも父は命を長らえた。

結果、父は人間の母と結婚して人間界で生活しながらヴァンポーリュとも交流をしているという唯一の吸血鬼となった。



──まぁ、とりあえずこんな感じ



実は他にも色々訳ありな事情が色々あるのだけど、其れは追々話す事とする──

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