「俺とおまえの契約は、おまえの前の世──つまり前世のおまえと交わされた契約だ」
「前、世…?」

けんちゃんがベッドに座る私の横で、同じく腰かけて其の長い手足を投げ出しながら話し始めた。

「前世って信じるか?」
「其れって…輪廻転生って事?」
「流石お釈迦様の国だ。信じるか?」
「…よく解らない」
「そうか。まぁおまえが信じようが信じないだろうがどうでもいい事だけど、今のこの現状においては信じろ」
「…」

漫画や物語の中ではよく扱われる題材だけど、所詮作り物の世界の事だと、そうとしか思えない状況。

信じるか信じないかと聞かれれば正直答えるのに困ってしまう。

「おまえの前世は今のこの時代よりもうんと昔。詳しい時代に関しては知らなくてもいいけど、日本とは違う、西洋文化が栄えていた世界で生きていた」
「日本人じゃないんだ」
「違う、ついでにいうと前世のおまえは女じゃなく男だった」
「! えぇ、そうなの?!」
「そうだ──おまえが男だったから今度は女にした」
「どういう事?」
「前世のおまえは道ならぬ恋をしていた」
「…其れって」
「おまえが愛した相手は男だった」
「────は?」





え…っと


其れって…つまり──


「おまえは今でいうBLだったという事だ」
「!!!!!」

(えぇぇぇぇぇぇ──?!!)

「な…なっ」
「別に其れほど驚く事ではないだろう。別に今時珍しくもない」
「や、ちょ、ちょっと…私…お、男…で、男の人を…」

余りの衝撃的内容に頭が回っていない。

男同士の恋愛だなんて、そんなの今だって見た事も知ってもいないって状況で…

(何も想像出来ないんですけどぉぉぉ──!!)

「パニくっている処悪いが話、続けるぞ。で、おまえがいた前世では同性愛者に対しては厳しい取り締まりがあったんだ。其れこそ魔女狩りよろしく、見せしめの様に同性愛者を見つけては片っ端から迫害していた様な時代だった」
「え」
「当然、おまえの道ならぬ恋も白日の元に晒され、拷問紛いの尋問をさせられた」
「そ、そんな」
「相手の名前を云えば死刑だけは逃れさせてやるという役人の言葉に頑として首を縦に振らなかったおまえは」
「…まさか」
「最後の最後までおまえの心には愛おしい男への思慕があった」
「…」
「おまえは相手の男を命を懸けて守ったんだ」
「…」
「羽衣…」
「……あ」

何故か解らないけれど、私は涙を流していたようだった。

「…其れは…本当の事…なの?」
「俺が嘘を云う訳がない」
「……そ、う」

泣く理由なんて何一つ思い出せないのに…

涙は止まる事無く、後から後から静かに溢れる様に流れ落ちた。

「…けんちゃん…止まらないよ」
「させたい様にさせておけ」
「…」

けんちゃんの其の言葉はちょっと変だなと思った。

私の体なのに…

まるで私の体じゃないみたいだ。

私の意志とは関係なく目から涙が流れる。


(…あぁ、そうか)


これは私の心が…


魂が泣いているのだとなんとなくだけど解ったのだった。


kaben
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