この世に神仏なるものが存在するというのなら、どうか我の望みを叶えたまえ!

どうか…

どうか愛おしいあの方と、来世でも繋がる事が出来る様にと

この世では叶う事の出来なかった幸せな未来をあの方と共に描く事の出来る世界で共に生きていける幸福を我に!

其の願いが叶えられるのなら我はどのような責め苦にも耐えられるだろう──




(あぁ…もう一度だけ逢いたかった…)

今際の際、想うはあの方の事だけ

愛おしいわたしだけのあなた

決して…

決してこの気持ち、来世でも忘れる事のない様に我は我を供物に呪う

(わたしはあの方以外の者とは決して交わらぬ)


──ソノネガイ、キキトドケタ──


(…)

意識が遠のくと共に何処からか聞こえた声に甘やかな官能を感じた

(わたしの願いは叶えられるのだろうか…)



其処で全ては暗黒に包まれた───















「無理」
「………え」

其の瞬間、ふわりと私の間を生温い風が通り抜けた。

「女と付き合うとか…無理だから」
「…」

呟く様に其れだけを云って彼はあっという間に私の前からいなくなってしまった。

「…」

其の場にただひとり残された私はただ茫然と立ち尽くすしかなかった。


奥山 羽衣(オクヤマ ウイ)17歳。

初めて恋をした人にあっさりとフラれてしまいました。


「はい、ご愁傷様」
「!」

いきなり聞こえた声に一瞬にして我に返った。

「いやぁ~見事な玉砕ぶりだったなぁ~」
「け、けんちゃん?!な、ななななんで此処にっ」
「なんでって見守っていてやったに決まっているだろう?可愛い子分の一世一代の告白。親分として見届けてなくてどうするよって話」
「子分って…親分って、もう!子どもじゃないんだから止めてよね、そういうの」

好きな人にフラれたばかりで落ち込んでいるところに、そんな軽薄な言葉を投げ掛けて来る幼馴染みについカッとして私は思わず殴りかかった。

「おっと」
「!」

勿論私のへなちょこな拳はあっさり交わされ、反対にギュッと腕を捕られてしまった。

「まぁ落ち着けって」
「あっ」

羽交い絞めにされながら、首筋にチュッと唇が押し付けられた。

「け、けんちゃん」
「全く…おまえはいつでも報われないのな」
「? 何」
「…」

急にトンッと体を離され、体が自由になった。

「今夜、部屋行くから」
「…なんで」
「仕方がないから慰めてやんよ」
「…」

掌をヒラヒラとさせながらけんちゃんは私の前から去って行った。

「…」

先刻けんちゃんの唇が押し当てられた首筋をそっと撫でる。

(…いつもこういう事するんだから)


物心がついた頃から私の傍にいた近所に住む幼馴染みの黒幸 眷蔵(クロサキ ケンゾウ)はいわゆるガキ大将だった。

体が小さく泣き虫だった私はけんちゃんのある意味遊び相手として恰好の餌食になった。

いつも意地悪をされ、泣かされ、酷い目に遭った。

だけど不思議とけんちゃんに苛められる事に対して私は本気で嫌がる、逆らう事が出来ないでいた。

其れは一方的な意地悪ばかりじゃなく、ほんの一握り感じる優しい気持ちを垣間見てしまう事があるから。

そんなけんちゃんに抱くのはただの友達や意地悪な幼馴染みといった様な形容詞じゃなくて…

(何といえばいいか解らない立ち位置にいる人…)

一瞬頭の中がけんちゃんの事でいっぱいになった私だったけれど、徐々に込み上げて来る失恋の痛手はやっぱり拭いきれなかったのだった。

kaben
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