フワフワとした気持ちのいい感覚があった。


「…」

薄っすら目を開けると柔らかい橙色の光が目に飛び込んで来た。

「…」
「目が覚めた?」
「!」

いきなりにゅっと顔が出て来て飛び上るほどに驚いた。


しかし驚いたわりに声は出なく、ただ驚きの表情を浮かべるだけだった。

「わぁ、君、瞳が蒼いんだね。黒髪だから日本人かと思ったけど違うみたいだ」
「…」
「すごい…綺麗な色…其れにすごく綺麗な顔」
「…」

先刻からしげしげと顔を見られている。

(…わらわは何かおかしいのだろうか?)

多分、この星の人間とは変わりない姿形だと思われるけれど…

(お、落ち着け…落ち着くんだ)

「ねぇ、大丈夫?何処か具合、悪い?」
「…ア、ぁの」
「! おぉ、日本語、話せるんだ」
「ぇ…」
「先刻から黙っているから日本語通じていないんじゃないかと思ったけどよかった」
「あ、ワ、ワカる…」

私はそっと耳に着けられているピアスを触った。

(ルオータから渡されたこのピアス…)

多分これのおかげだと思われる。

このピアスの様な小型順応変換装置のおかげで、身を置く星の環境に適応出来る様に私の体が変換されているのだ。

「ねぇ、話、出来る?」
「…」

先刻からわらわに話しかけているこの男。

(恐らく…悪人ではなさそうだ)

「君は宇宙人なの?」
「…ゥちウ…じン?」
「この星の人間じゃないでしょう?」
「…」

どう反応していいのか戸惑った。


妙に先回りして話を進めるこの男が一体何者なのか…

其れを知るためにわらわが取るべき態度はどうしたものかしばし考え込む。

「俺の名前は渡会 霧。わたらい きりって云うの」
「…ワタラ、ィ、キ…」
「難しい?『きり』って云える?」
「キリ」
「うん、そう、きり──で、君の名前は?」
「……ファーラ」
「ファーラ?あぁ、やっぱりなんか宇宙人っぽい名前だね」
「…ウちうジん…?」
「ファーラは何処か遠い星から来たんじゃないの?」
「…」

(何故このキリ…という男は普通にわらわと喋っているのだろう?)

普通はもっと驚くものではないのか、と思ったけれど…

「俺ね、偶然君が乗って来た宇宙船?みたいなものを発見してね、其処から気を失っていた君を救い出したんだ」
「…キリが、わらわヲ?」
「わらわ──君は自分の事をわらわって云うの?」
「…」
「もしかして位の高い…お姫様みたいな感じの人なの?」
「…」

どうしてこの男は先回りして何もかも解った風な話し方をするのだろう?

(この星の人間とはそういうものなのだろうか?!)

いまいちこの【チキゥ】という星の事に関しての知識が乏しかったわらわは戸惑った。

だけど今は1分1秒だって時間が惜しい。

わらわは早急に目的の物を入手して星に帰らねばならないのだから。

戸惑っている暇はないと思い、わらわはこの男に事情を話す事にしたのだった。


「わらわハ…セフリドといウ星から来タ、セフリド国王女のファーラ。我がセフリド国に数年前かラ原因不明の奇病が蔓延り始め多くの民が治療ノ甲斐なく亡クなってイる。今や国の人口が最盛期ノ1/3まデ減ってしまってイる。其の危機的状況ヲ救うたメノ秘薬が【チキウ】といウ星にあると知り、民ノ代表であるわらわガこうやってこノ星に赴いた──といウ事ナのだ」
「其れは壮大な話だね」
「…」
わらわが意を決して話した事情をこの男は其のひと言で片づけた。

少し苛立ちの感情が湧いたが、所詮他人事なのだろうと思ったら其の苛立ちの感情は捨て置けた。

(今は少しの感情も切り捨てておかねば…目的の物を入手するまでは)

私は少し息を整え、男に問うた。

「キリは…其ノ秘薬のありかを知らヌか?」
「秘薬って…名前とか解るの?」
「確か……コーセェブッシッ…といウ名前だ」
「…」

男の顔が何とも微妙なものになった。


知っているのか知らないのか…


わらわの──いや、セフリド国の命運は今、この男にかかっている様な気がして仕方がなかった。


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