何とか先輩と別れて俺は微かに見えた流れ星の落下地点を目指して車を走らせていた。

(確かあの森林公園の位置と寝ていた方向、其れと夏の星座の座標からして──)

頭に中で複雑な数式が組み上がって行く。

どうでもいい事にばかり計算が早くて時々可笑しくなるけれど、結局俺は自分の興味のある事にしか積極的に行動出来ない男なのだと自嘲したのだった。



小さな時から天才少年だと云われてよくテレビに出ていた。

特に数学的な事に関して頭がよく回り小学生の時には既に大学レベルの数式を解いていた。

そうなって来ると俺の周りは色々と騒がしくなった。

俺を使って金儲けをしようと企む大人がまずは俺の両親を金で懐柔して行こうとした。

ただ俺の場合、両親が非常に良く出来た親だったためにそんな汚い大人から常に俺を守ってくれた。

親の事を思って俺は頭がいいという事を隠す様になった。

普通に学校に通っている分の授業はつまらなさ過ぎてやる気にならなかったので自然と落ちこぼれる様になった。

そんな俺を周りは天才児に有りがちな大人になるにつれてただの人になってしまった──という誤った認識で見る様になりあっさり俺や両親の前から消え失せた。

俺にしてみれば其の間違った認識を持たれた方が都合が良かった。

実際俺は自分の興味は惹かれる事に対してだけ頭が働いたのだから世の中に当てはまる【天才】とは違うんだろうなと思った。


大学に入る頃には少し手ごたえの感じられる分野と出会い、必要以上に頭の回転の良さを見せる様になると、今度は女たちが俺に群がって来た。

なんでもIQの高い子どもが欲しいとかで俺の遺伝子を求めて次から次へとセックスに誘うのだ。

見た目もそこそこよかった俺は優良物件だとかで彼女志望者も多かった。

だけどそんな目的の女をわざわざ彼女になんてしたくない。

阿保らしいと思いつつも、遊ぶ分にはいいかと思い代わる代わる相手をしているけれど…

何故か俺は一度も女の中でイッた事がなかった。

自慰の時はいくらでも出るのだけれど…

(なんでかな?)

まぁそんな事はどうでもよくて──

(今は流れ星だ)

久しぶりにワクワクしそうな事が起きる予感がして俺はひたすら車を走らせた。




おおよその目星をつけた場所に車を止め、俺は辺りの様子を調べた。

(…結構丈の長い草が多いな)

車に積んでいたちいさな懐中電灯の明かりだけを頼りに奥へと進んで行く。

すると

(! なんだ…あれ)

妙にデカくて太い竹みたいな植物がキラキラと光っていた。

(おいおい…まさか…)

俺の頭の中にはある昔話の一説が浮かんでいた。

この現代においてアレなものが存在するはずがないと思いつつも、俺の興味は最高潮に高まっていた。

光る植物に近寄り、マジマジと見ると平らな部分に一か所だけ無機質な突起があるのを見つけ考えなしに其の突起を押してみた。

瞬間

バシュゥゥゥゥ───!!

「わっ!」

物凄い音と、煙で辺り一面が真っ白になった。

「ちょ、な、何っ、何も見えない」

俺は一生懸命手で煙を払いながらも目を凝らした。

やがて其処に広がっていた光景がぼんやりと目に飛び込んで来た。

「!」

其処にはパッカリと観音開きに開かれた筒の中ギリギリに収められていた全裸の女の姿があった。

色素の薄い艶やかな長い髪に細い体、豊かな胸、くびれた腰──そして薄く生えた陰毛。

「…」

目を瞑っていて幼い雰囲気を窺わせているけれど、其処を見て俺は彼女が大人の女なのだというのが解った。

俺は其のあまりにも神々しい姿に一瞬にして目と…そして心を奪われた。

(まさか…本当にかぐや姫?!)

ドキドキと高鳴る胸を落ち着かせようと俺は何度も深呼吸をするのだった。


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