「全てはニーヴァの予言だったのです」
「ニーヴァって…ハーレムの?」
「そう、ハーレムを管理している占星術師です」
「…」

そして母上は遠い目をして語った。

「今から12年前、5番目の子を身ごもった私は早々にニーヴァに予言されたのです。『其の姫君はこの国にとても大きな役割をなすために宿った命であります』と」
「…大きな役割」
「私には其れがどんな意味を持っているのか、このお腹の子がどんな宿命を持って生命を得たのか解らなかった。ただニーヴァはお腹の子をフーガの目に晒さない様に育てる様にと進言したのです」
「え、ぼ、僕に?」
「えぇ。アスファ以外の全て男性の目に触れさせない様に隠す様に育てろと云われたので、私はフーガだけには内緒でノエルを産んで育てて来たのです」
「じゃあ、他の…姉上もカノンもキャロルもノエルの存在は知っていたって事ですか?!」
「えぇ…」
「…」


あの日──

身重の姉が何処かに行くと云っていたのは…

あの時母上も何処かに出かけていて…

(みんなノエルの処に──)

「ど…どうしてそんな…」
「フーガ」

突然母上にギュッと抱きしめられた。

「ごめんなさい…いくら進言とはいえ酷い事をしてしまったわ」
「…」
「だけどあなたがノエルと結婚したいと云った時、ニーヴァの予言の意味が解ったような気がしたの」
「! ど…ういう意味…」

薄っすら泣いていた涙を優しく指で拭われ、僕は母上と顔を見合わせた。

「次期ヴァンポール国王になるあなたに完全なる血の統合をもたらす者を授ける為にノエルは産まれたのです」
「…血の…統合って」
「フーガとノエル。共に半分ずつアスファの血筋を持って産まれて来たあなた達が結ばれ、そうして出来た子どもは完全なヴァンポーリュ王家の純血種になるのです」
「!」
「ヴァンポーリュにおいて血族婚は推奨されているのは知っていますね?」
「そ、其れは…知識としては…勿論」
「半分ずつのものが交わってより純度の強い血を持つ子どもを成すのです」
「…」
「フーガを次期ヴァンポーリュ王として認めていない一部の大臣たちもこの事で心証はかなり好転するでしょう」
「…」
「ニーヴァはあなたに妹としての情報のないノエルを逢わせるために、ノエルをあなたから隠して育てる様にと進言したのです」
「…妹」

頭では解っている。

この国では近親相姦は尊い行為だという事も。

(解ってはいるけれど)

「フーガ、あなたはノエルの事を妹だと知っても愛せますか?」
「!」

多分完全なヴァンポーリュ族ならなんの躊躇いもなく受け入れられる事なんだろうけれど…

「ぼ、僕…は…」

僅かに体の中に流れる人間の血が『禁忌を犯すな』とざわついている様でなんともいえない恐ろしい気持ちに支配されている。


実の妹を…

欲望のままただの女の様に抱いてしまった事に酷い嫌悪感を感じた。

「…」

何があっても愛していると

どんな出自でも素性でも身分でも僕はノエルを愛していると誓ったはずだったのに──

「──くっ」
「フーガ!」

気が付けば僕は母上を振り切って闇雲に駆け出していたのだった。


halem
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